第11章 9。
住所も記されておらず、差出人の名前もなく、【Meine Liebe Hange Zoe】と私宛の宛名だけが記されていた。私は封筒から中身を取り出し、便箋に書かれた内容を見て、思わず吹き出した。
「無事、男の子が生まれました。名前はリヴです」
私は癖のない美しい文字で書かれたその一行の文章を指でそっとなぞり、便箋を額に当て、小さく笑みを浮かべ続けた。
「ははっ、いつ見ても驚きだよ。住所も書いてない、差出人の名前はないし…でも、こんな手紙を送ってくるのは君だけだとすぐに分かったよ。…」
私はひとしきり笑った後、そう呟き小さく微笑みを浮かべた。そして、リヴの姿を思い出した。あの子を見たとき、リヴァイにもにも似ていなくて、思わず驚いてしまった。いや、どちらかと言えば見た目はリヴァイを幼くしたようにも見えたが、それはちょうど二人の要素がうまく混ざり合っているのだろう。リヴの性格は、あの短い時間では完全には理解はできなかった。
それでも、一つ断言できることはとても素直で好奇心旺盛な性格であるということだ。この先、あの子と関わることはないだろう。そのため、私にリヴに対してできることは何もない。それでも、できることと言えば「健やかに育ってほしい」と願うことくらいだ。
そう思いながら、最後に便箋に目を通し、それを封筒の中にしまった。そして、マントと他の二通の手紙を胸に強く抱きしめ、名残惜しい気持ちを抱きながら、そっと静かにそれを地面に置いた。
そして、ポケットからマッチ箱を取り出し、その箱から一本のマッチを取り出した。
「…何やってるのさ…早く火を点けなよ。長居はできないんだから」
しかし、いざ火を点けようとすると、手が震えて固まってしまい、動かなくなった。私は大きくため息を吐いた。
「あぁ!もうっ、私らしくない!」
私はそう呟いて、その場に座り込んだ。そして、両手を後ろに置いて顔を上げた。
その場には木々が鬱蒼と広がっている。しかし、新月のため木々の間から見えた夜空には幾千もの星が輝き、非常に美しかった。私はその夜空をよく見るために、メガネを額に上げた。
昔からリヴァイとはよく空を見上げていた