第3章 捜査開始!
「私を一人にしないでっ!」
千代は勢いよく体を起こす。
バイト先から出てきた制服のまま、ワイシャツが汗で湿っていた。
またあの悪夢だった。
ほぼ毎晩、父親の山田野春樹が亡くなった日の夢。
母親を幼い頃に亡くした千代にとって、父親だけが頼りだった。
千代が中学三年生になってから父親はなにかの研究に没頭し、千代とあまり関わりがなくなってしまったがそれ以外はいい父親だった。
思い出すかのように千代はペンダントを握る。
「おぬし、なにか怖い夢でも見たのか?」
少しだけ低く、透明感のある声がした。
まだ寝ぼけている目で周りを見渡すと、長髪に袴を着て日本刀を持ち、パイプ椅子に座って千代を心配そうに見つめてくる若く見える男。
「…なんで侍が?」
「急に叫んで起き上がるものだから驚いたぞ」
目の前にいる侍に一言かけるだけで黙り込んでしまう千代。
「おはよう、お姫様」
ノックをし、パソコンを持ちながら千代がいる寝室に入って来たルパン。
「……昨日のこと夢じゃなかったのね」
「な、なんでため息つくの…」
印象的なルパンの猿顔を見て、千代は昨晩のことが夢ではなかったと自覚する。
ルパンは千代が寝かされていたベッドに腰をかけ、パソコンと睨めっこをする。
そんなルパンをじっと千代は黙り込んで見つめた。
すると、どこから煙草の匂いがしたのだ。
千代はキョロキョロを目線を動かすと、部屋の入り口に立っている男に目が入った。
そこには煙草を吸いながらドアの開いている部屋の外から笑う次元が。
「お前の猿顔と侍がいるから嬢ちゃんびびったんじゃねーのか?」
「んだよっ、猿顔って!」
次元の低く優しい声に千代が強く反応する。
千代は次元をじっと見つめ、冷静な声を彼に浴びせた。