第6章 エピローグ
「ルパン、次元が戻って来たぞ」
フィアットの中で目を閉じていた五ェ門は、何かの気配を感じ外で煙草を吸っていたルパンに声をかけた。
車内に黙って乗り込んだ次元を五ェ門は驚いたかのように見つめる。
「お嬢ちゃん、送ってきたのか」
「…ああ」
車に乗り込んだルパンに一言返す次元。
いつもと雰囲気の違う次元に五ェ門は首を傾げた。
「なにかあったのか、次元」
ルパンはアクセルを踏み、フィアットを走らせる。
五ェ門が聞いたことに次元は答えない。
そのことに感づいたルパンはクスクスと笑い始めた。
「な、なぜ笑う!?」
「はっははは、五ェ門わからねえの?次元もやるねえ、あんなに若い子に惚れられて。ロリコンの素質あったりしてー!」
「いや、ガキには興味ねえよ。ロリコンなのはお前と五ェ門だろ」
「意味がわからないぞ、それに拙者はそんなものではござらぬ!」
「あー、わかったわかった。言った俺が悪かったってー!」
五ェ門は助手席に座っている次元の首元に、勢いよく斬鉄剣の刃先を向けた。
次元は目を丸くし、両手を挙げる。
五ェ門はふーっと息を吐くと、なにごともなかったかのように斬鉄剣を筒に戻し座り戻す。
「あーあ!まーた、働き損のくたびれ儲け…か」
ルパンはあっけらかんとしたように笑った。
「……俺な、あの子の親父さんに助けられたことがあるんだ。ニューヨークで体調崩してまで仕事してぶったおれたとき看病してくれたんだ。山田野春樹…千代を見て驚いたさ。性格も似ていた…目なんかそっくりさ。さすが親子だと思ったぞ」
「なぜあの子に言わなかった?」
「そう伝えられたってなにになる?」
「千代殿はそんな人ではないだろう」
「まあ…お前たちが今までしてきたようにあの子の背中を押せたならこれでいいんだよ」
次元は灰皿の中に残っていた煙草を咥え、ライターで火をつけた。
窓を開け、次元は冷たい風に当たり煙りを吹くのだった。
……彼に恩返しはできたのだろうか?
いつの間にか辺りが暗くなり、キラキラと輝く東京の街並みにフィアットは溶け込んでいく。