第2章 黒ずくめの男
「ちょっと待って……待って。なんなのこれ」
「ルパン、あっちに車停めてあるだろ?行くぞ!」
「…ルパン?」
野球帽の男がその名を呼んだ瞬間、千代の心臓がうるさいくらいにバグバグ動いた。
ルパンと呼ばれた長髪の男は、腰を抜かした千代を抱きあげ野球帽の男と走り出し停めていた車に乗り込むと、運転席に座った野球帽の男が勢いよくアクセルを踏んだ。
すると、二人は被っていたマスクを剥がす。
二人の顔が作り物だったという事実に、千代は唖然するばかりだった。
赤いジャケットを着ている男に、バイト先のカフェで何度も見た黒い帽子を被り黒いスーツを着ている男。
さっきまでの姿とは大違いだった。
「あなたはカフェにいた…!」
「なんだよ、知り合いだったのかよ」
「知り合いじゃねえ、顔見知りってやつだ」
そう言うと黒ずくめの男は車の窓から体を少しだけ出すと、千代を襲った男たちに向かって拳銃を向けた。
引き金を引くと、一人の男の左足に一発命中。
「うーん、うまくまいたかな」
千代は突然のことに黙り込んでしまい、隣に座っているルパンの顔を見つめる。
「ところでお嬢さん。君がつけているペンダント、貸してくれないかなぁ?お父さんの山田野博士がどこかに隠したお宝を探しているんだ」
「なんですか、お宝って……」
じっと見つめてくる彼女と目が合ったルパンは、ただただ小さく微笑むだけだった。