第4章 表と裏
「次元さんは……その人のこと好きだったの?」
思わず口から出た言葉に千代は後悔した。
出会ったばかりの男に恋愛事情なんてきいても引かれるだけだ。
たとえ、自分より年上で''優しい人"であっても。
だが、白衣の天使と呼ばれた看護師のことを思い出す次元の表情は明らかに……自分だけが生き残ってしまったという後悔も感じた。
もちろん、千代の問いに次元からの答えはなかった。
そして、次元は立ち上がり千代に言う。
「俺がまた傷だらけになったとき今度は手当てしてくれ。飲み終わったら寝ろよ。昼間はスカイツリーに行く。盗み終わったら……お別れだ千代」
「おわ…か、れ」
寝室に入っていく次元の背中が脳内から離れない。
そうだ、春樹が隠したものをルパンが手に入れたら自分は彼らにとって用済みだ。
きっと、次元は自分が鍵になるペンダントを持っているから優しくしてくれるだけ。
自分には本当になにもないのだと、彼女は次元に作ってもらったホットミルクを飲みながらとてつもなく悲しんでいるということを自覚した。