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【ルパン三世】初恋は煙草のかほり

第4章 表と裏


「傭兵時代、白衣の天使と呼ばれている看護師がいた。その看護師は一度も街から出たことがないという。いつ死ぬかもわからない俺たちを彼女は知らない世界を知っていて羨ましいと言った。俺たちは戦争が終わったら彼女をこの街から連れ出すと約束した。……その約束は果たせなかったがな」


「……その看護師さんはどうなったんですか?」


「勤め先の病院が敵軍に攻撃され、彼女はそれに巻き込まれて死んだ。本当に天使みたいな無垢で世間をなにも知らない女だったよ」


ルパンと五ェ門と組んでいない今とは違う次元がどこか過去遠くに強く感じる。


次元はルパンの相棒で仕事仲間で……ただそんな存在だと思っていた。


彼にはなにか重いものを背負っていて、自分なんかよりも生きた''過去"がある。


千代は思い出すかのように優しい顔している次元を横目で見つめた。


なぜか千代は次元に、今まで感じたことのないような安心と信頼感を覚えたのだ。



「次元さんはすごいです…いろいろなことを乗り越えてきたんだ。きっと人が亡くなったのをたくさん見たんでしょうね。今までの生き様が姿から見えてきます」


「そりゃ、お前さんよりは長く生きているからな」


次元は千代の言葉に笑いながら、酒が飲みたいと小さく呟く。


「千代は彼女に似ているよ、目の前にあるものしか知らない。千代は彼女と違って今を生きてる。だからな、これから広い世界を知るのもまだそう遅くはないんじゃないか?」


なぜ、この人は自分が誰かに投げかけてほしかった言葉を言ってくれるのだろう。


確かに自分は''外"の世界を知らない。


''今"あるものしか見えていない。


友達と出かけてもアルバイトをしていても勉強をしていてもなにも得られていなかった。


三人に出会ってからの方が今まで感じたことのない感情がある気もする。
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