【BASARA】幸村落ち。元遊女ヒロイン【内容激しめR18】
第2章 出逢い
そして、彼はその陣羽織をバッと脱ぎ捨てると、佐助という男にそれを投げ渡した。
「これを渡してやれ。着るものがなければ、この先困るであろう」
「それくらい自分で渡したらいいじゃない」
「うるさいっ!」
へいへいと言いながら、迷彩服の男が嘆息混じりに近づいてくる。
何かされるとは思わなかったが、条件反射でびくりと身体が強張った。
「大丈夫。俺達ゃ何もしないよ。本当に。大将がそれを許さないからね。絶対」
受け取った陣羽織からは、男の匂いがした。
汗と。
血の匂い。
でも、それ以外の何か…。
とても、甘い香りがする。
これは…一体どういうことだろう。
ここに来る前、香でも焚いていたのだろうか。
踵を返した彼の背に目を向けると、今度はそこに六文銭が刻まれていた。
武将というものは、それぞれの御旗を持っているというのは知っているが、彼の背負うその意味まではわからなかった。
「行くぞ佐助。まだ野盗や落ち武者共がこの辺りに跋扈しているからな。これ以上狼藉を許す訳には行かぬ!!!!」
「はいはいっと。じゃ、君、元気でね。もう捕まって酷い目に合わないように治安の良い国に行くといいよ。例えば武田とかね。じゃ!」
一瞬で、男は跳ねるように消えた。
忍びというものを、初めて目の前で見た。
しかし、それで驚いて呆けていれば、この人とはもう二度と会えない。
この赤い男とは。
この武田の大将には。
まだ私の名前すら、覚えて貰っていないのに。