【BASARA】幸村落ち。元遊女ヒロイン【内容激しめR18】
第5章 言合い
猛ダッシュ…というのかな、あれは。
牡丹は、だから一体何事かあったのでしょうと思って振り返っただけだ。
しかし途端にギクシャクして物思いに耽ってしまった幸村様に、牡丹は少し安心もしていた。
あのピュアだった彼が、誰彼構わず女を欲してしまう節操なしに堕落してしまったのだとしたら…と自分を責めたからだ。
私の身体だけでは物足りない、そう開花させてしまったのならば私が原因でしか考えられないと。
――私にはもう飽きてしまったのだと。
「修業とは、あのように破廉恥なものなのですね」
でも私を追ってきてくれた。
一介の遊女如きだった私を。
「あ、あれ、あ、あ、あれは、その…た、たま、たまたまにござる!!!」
男は皆、満足すると逃げるように去っていくばかり。
無言で不貞腐れる面倒な女の側にこうして寄り添ってくれたのは幸村様が初めてだ。
「たまたま、破廉恥の修業ですか?破廉恥極まりないですね…」
そう、だからこれはきっと、嫉妬ってやつだ。
あの女忍びさんはとても美しくて…。
私に興味がなくなるのも無理はない。
だけど寂しい。
こんな気持ちになるのも、また初めてだ。
「は、破廉恥極まりないとは…そなたのことを言うのだ!」
「そうでしょうか?幸村様も随分と破廉恥…いえ、助平を通り越して変態になられたと思いますが」
少し強めに想いを口にすれば、幸村様は途端に口を濁してしまう。
可愛らしい人だ。
虐めたくなるほどに。
「そ、それは牡丹殿が望むが故に…仕方なく…」
「仕方なく…他の女人を抱くのですね…」
「う…」
弁解の余地がない。
こんなに俺を困らせるおなごは初めてだ、と幸村は思う。
しかし、嫌ではない。
むしろ…。
「私が今、どれだけ嫉妬に駆られているか、お分かりですか?」
牡丹は幸村のやりたかったことを、簡単にしてのけた。
片方の手を引き、よろけた所を抱き締め、唇を奪う。
こんな事は性書の何処にも書いていなかった。