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【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第1章 騎馬の民へ捧ぐ幸運


2人を乗せた車が住宅街へ続く道に差し掛かった時、助手席のオタベックが控え目に口を開いた。
「今夜は、一緒にいてくれないか」
「良いのかい?」
「家族は、後援関係の人達と市内のホテルで会食とかあるから、明日の昼まで帰って来ないんだ。2人共『出来れば、今夜は守道にいて貰いなさい』って言ってたし」
些か緊張した面持ちで提案するオタベックに、守道は小さく首肯しながら運転を続ける。
「信用されてるんだな、俺は。こういう時は、つくづく父親の存在を思い知らされるよ」
「別に、篠大使の事だけが理由じゃない。貴方だからだ」
「何だか複雑な気分だよ。俺はある意味、ご両親の信頼を一番裏切るような真似を君にしてるから」
オタベック宅のガレージのスペースに車を停めた守道は、後部座席に積んでいたオタベックの荷物を取り出していたが、
「でも、多分家族も…少なくともママは、俺達の事に気付いてると思う」
ボソリと告げられた恋人の言葉に、うっかり荷物を落としそうになった。
「…そうなの?」
「今日も、『試合の後で疲れてるんだから、守道が一緒でも早く寝なさい』って」
「それは、単に君を気遣っただけじゃ」
「だと良いけど、どうもあの顔はそれだけじゃないような…」
曰く有りげな母親の視線を思い出しながら、オタベックは仄かに頬を紅潮させる。
守道も、彼の母親と電話等で話をする度「あの子の事を頼みますね」と言われるが、それは単に在カザフ日本大使の息子である自分への信頼からだと思っていた。
母の子を想う愛情故か、あるいは女性特有の勘の鋭さなのか、守道は、改めて彼女の前では気を引き締めていこうと決意を固める。
しかし、
「そんなに構えないでくれ。貴方は本当に信頼されている」
「…」
「それに、俺は望んでこういう関係になったんだ。貴方に強制されたのでも、犯された訳でもない」
車のドアを閉めながら守道に近付くと、オタベックは彼の背に身を預けた。
「だから、勝手に離れようとしたら許さない。俺が貴方のものであるように、貴方も俺の…」
震えた声と指先に気付いた守道は、振り返ってオタベックを抱き寄せる。
「…ここは冷える。早く中に入ろう」
恋人の頬を撫でながら、守道は優しく促した。
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