• テキストサイズ

【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第1章 騎馬の民へ捧ぐ幸運


暖房の行き届いたオタベックの部屋で、2人はオタベックの入れた紅茶を飲んでいた。
試合の後という事で、大好きなカザフ名産のチョコレートを口に含みながら、オタベックは守道を見つめ続ける。
ブランデーの入った紅茶に口をつけつつ、守道は暫し恋人の様々な感情を含んだ視線を受け止めていたが、徐に立ち上がると、自分の荷物から小さな箱を取り出した。
「これは…?」
「開けてみて」
今ひとつ要領を得ない返事に首を傾げながら、オタベックは守道から渡された小箱を開ける。
すると、中から馬蹄がデザインされたブレスレットが出てきた。
「騎馬の民の末裔なだけあって、君はバイク姿も良く似合ってる。だけど、君はアスリートで俺もスケートとは無関係だから、いつも一緒にはいられない。それで寂しい想いをさせているのはすまないと思ってる」
「そんな、貴方は出来る限りの事を、俺にしてくれてるじゃないか」
「…有難う。まあそんなのもあって、離れてる時も君と一緒にいたいって、愚かな独占欲の塊でもあるんだよ。あと馬蹄は、海外でも日本でも昔から幸運の象徴や交通のお守りだからね」
箱からブレスレットを取り出したオタベックは、シンプルなプラチナのデザインと、中央に取り付けられた馬蹄のモチーフを暫し眺める。
「綺麗だな」
「気に入ってくれたのなら嬉しいよ。それ、俺の知り合いのデザイナーにオーダーした一点物だから、余程憲章とかうるさい大会じゃなければ着けても大丈夫だと思う。演技の妨げにならなければの話だけど」
「確認してからになるけど、出来るだけ競技の時も着けていたい。貴方からの贈り物だし」
口元を綻ばせながら、オタベックは早速プレゼントのブレスレットを左手首にはめようとしたが、守道に止められた。
「それ、俺が君に着けてもいい?」
「え?ああ、勿論」
答えながら、オタベックはベッドに腰掛けた状態で己の左腕を伸ばしかけたが、椅子から立ち上がった守道が自分の前で片膝を着いたのを認めると、一気に鼓動が跳ね上がるのを覚えた。
「…もう一度訊くよ。オタベック、俺のアルティン(黄金)。本当に今、俺が君の手にコレを着けてもいいのか?」
守道の真剣な眼差しと声に、オタベックは目を見開くと、その身を震わせた。
/ 14ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp