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【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第1章 騎馬の民へ捧ぐ幸運


「隣、いいか?」
「どうぞ…って、何で君がいるの?」
「貴方と学部は違うけど、俺もここの学生だから。教授に頼んで、特別に聴講させて貰う事にしたんだ」
大学の講義室で声をかけられた守道は、自分の右隣の席に腰掛けたオタベックに気付くと驚愕した。
「それに、同じ学び舎の先輩として後輩が真面目に勉強しているか、ちょっと気になってたからな」
「何だいそれ。まあ、せいぜい気の済むまでご覧になって下さいよ、パイセン」

あれからオタベックも守道も、なるべく素直な気持ちを相手に伝える事にした。
『英雄』の事情を汲み過ぎて、肝心のオタベック個人の気持ちを何処か蔑ろにしていた事を反省した守道は、講義まで余裕がある時にはオタベックをリンクまで送迎したり、朝の練習を終えた彼とリンク付近のカフェでブランチをするようになった。
またオタベックも、大学に通える時は守道と講義を聞いたり食事をする事で、出来るだけ一緒の時間を作るよう心掛けたのである。
「何だか、貴方とこうして大学で講義を受けてるだなんて、不思議な気分だ」
「まあね」
講義の時は眼鏡をかけているオタベックの悪戯っぽい視線に、守道は顔には出さねど、密かに胸を踊らせていた。
「惚れた弱み」なのだろうが、今隣にいる彼は、リンクでの勇壮な姿とは違う魅力がある。
努めて平静を装いながら講義に耳を傾けている守道を、オタベックは面白そうに眺めていた。

この頃の守道は、時折TVだけでなく、直接リンクでオタベックの試合を観るようになった。
「気が散らないのだろうか」とも考えていたのだが、当のオタベックから「貴方が観てると、いつもより頑張れる気がする」と表情は変わらないが、弾んだ声で返されたのである。
流石に全ては無理だが、今度のカザフナショナルは、直接会場まで応援に行く約束をした。
国内なら無敵だろうが、「最近、自分より年下の選手達も随分上手になってるから、油断だけはしない」と、オタベックは後輩の活躍を喜ばしく思いながらも、試合への意気込みを熱く語っていたのだった。
「それに、貴方の前で無様な真似をしたら、思い切りからかわれそうだし」
「はは、それ有り得るね」
「全く…」
そうしている内に講義終了のチャイムが鳴り、2人は席を立つ。
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