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【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第1章 騎馬の民へ捧ぐ幸運


「守道?」
「今、俺の方を見ないで。下手すると、部屋に着く前にガレージどころか、その辺に車停めて君を襲ってしまいそうだから」
硬質な声とは裏腹に、オタベックはこっそりと視線をやった先で、彼のジーンズの股間部分が妙に隆起しているのに気が付くと、先程よりも胸をドキドキさせた。

守道のベッドの上で湿った吐息を漏らしたオタベックは、寝返りを打つと、キッチンで湯を沸かしている恋人の後ろ姿を見た。
彼の背中に残るひっかき傷に改めて羞恥心と、そして仄かな満足感を覚えていると、紅茶の入ったカップを手に守道が戻って来る。
「お腹空いたろ。ポトフの残りで良ければ温め直すけど?」
「貴方の作るポトフは好きだから、食べたい」
カップを受け取ったオタベックは、守道の穏やかな瞳と声に、つい先程までのベッドでの強引な彼を脳内で比較すると、うっすらと頬を染めた。
カップをベッドサイドに置いたオタベックは、遠征の疲れとは異なる気怠い身体を起こしながら、ベッドの下に散らばっていた衣服の中から下着を見つけると、足を通す。
そして、その上に守道のパーカーを羽織ると、キッチンの方から漂ってきた食欲をそそる匂いに鼻を鳴らせた。
ダイニングの椅子に腰掛けたオタベックの格好に、一瞬だけ目を丸くさせた守道だったが、温めたポトフと黒パンをテーブルの上に置く。
暫し無言で食事をしていたオタベックだが、自分の正面でカップを傾けている恋人を一瞥すると、ためらいがちに口を開いた。
「貴方のバイクの事だけど、」
「その話はもう終わりって言ったろ」
「俺が貴方のバイクに乗ったのは、少しでも貴方を近くに感じたかったからなんだ。特にシーズン以降は、俺も貴方も忙しくて中々会えずにいたから。メールや電話で貴方の声は聞いていたけど…やっぱり、それだけじゃ物足りないと思う自分がいる」
スケート関係者ではない守道は、基本オタベックの競技活動について口を挟まない。
それを有難いと思う反面、やはり遠征その他で離れ離れになると、どうしようもなく寂しくなる時があるのだ。
「…すまない、こんなのただの言い訳だ。俺が貴方のバイクを傷付けた事に変わりはないのに。貴方の言う通り『ちょっとだけなら』って、慢心と油断が招いた事だったんだ」
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