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【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第1章 騎馬の民へ捧ぐ幸運


アルマトイに戻って来たオタベックは、ゲートを出ると、僅かに逸る気持ちを抑えつつ待ち合わせ場所へと向かった。
遠征先の空港から家に電話をした際、「今夜は急ぎの用が入ってしまったので、私達の代わりに守道が空港まで貴方を迎えに行ってくれるわ」と、母親から言われたからである。
ターミナルの送迎用レーンに停車する1台の車を見つけたオタベックは、こちらに気付いて車から出てきた守道に向かって歩を進めた。
「おかえり。荷物はこれだけ?」
「あ、ああ」
オタベックは、カートからスーツケースその他をトランクに詰め込む守道を手伝おうとするも、「君は車で休んでなさい」と助手席に押し込まれてしまう。
荷物を詰め終えカートを所定の位置に戻した守道は、再び車に乗ると、空港からそれ程離れていない市内へと出発した。
車内のオーディオプレイヤーから流れる守道の好きなジャズのインストゥルメンタルが、オタベックを心地良い眠気に誘っていたが、何曲目かを過ぎた後で、思わず閉じかけていた目蓋を開いた。
それは、守道の部屋で同じ夜を過ごす時にも聴いた事のある曲で、まるで刷り込みのようにオタベックの心と鼓膜を支配してくる。
「守道、」
無言でハンドルを操る守道の横顔を盗み見ながら、オタベックは車内の空調だけが原因でない掠れた声を出す。
「今夜は貴方の部屋に行きたい。…ダメか?」
暫し答えを待つが守道から何の反応もないので、オタベックはため息を1つ吐くと、視線を足元に落とす。
すると、信号待ちで車が停止して間もなく、オタベックの太腿を無骨な手が這い寄ってきた。
「…遠征で疲れてるんじゃないのか?」
「明日は休みだし。それに…貴方が空港まで迎えに来ると知ってから、ラウンジのバスルームで…その、色々準備して…どうした?」
信号が赤で良かったと、守道はハンドルにぶつけた額を擦りながら、顔をオタベックの方に向ける。
「ここに戻ってくるまで、結構時間かかっただろう!?」
「俺は元々、遠征の帰りはずっと寝ているから。貴方の事を考えながら眠って…目が覚めたら着いてた」
照れ臭そうなオタベックの声を聞きながら、守道は信号が変わると同時に、少々荒っぽく車を発進させた。
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