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【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第1章 騎馬の民へ捧ぐ幸運


休日が終わると、2人はまたリンクと大学へいつもの日常に戻る。
あれ以来メールでの連絡はしていたが、オタベックも守道も試合と試験を控えていたので、お互い顔を合わす事が出来ない日々を過ごしていた。
バイクの件を家族にも話したオタベックは、軽い説教をされた後、自分のバイクの鍵を彼らに預けた。
試合や遠征は続くし、守道の言う通りこれから更に冷え込みが厳しくなるのでバイクどころではなくなるが、これはオタベックなりのケジメでもあったからだ。
「この度は、本当にあの子がご迷惑を…」
「バイクがあれば乗りたくなるのに、彼に鍵を持たせっぱなしにしていた俺も悪かったんです。こちらこそ、俺のバイクを預かって頂いて有難うございます」
オタベックの母親からの電話に、守道は苦笑しながら返事をする。
留学同様守道の下宿先のアパルトマンは、在ロシアカザフ大使やオタベック達の仲介により、オタベックの自宅から近くの場所にあった。
現地でリースした車は下宿先のガレージに停めているが、バイクは盗難防止等の理由から、オタベックと彼の家族の厚意に甘えさせて貰っている。
「あの子が、変に肩肘を張らず自然体でいられるようになったのは、貴方のお蔭です。長い間あの子に刻まれたままだった深い傷を、貴方が癒やしてくれたから…」
「それは、彼が自分自身の力で乗り越えたのです。俺は、切欠を与えたに過ぎません」
「そうした物言いは、お父様の篠大使に似ていますね」
彼女の含み笑いに、守道は電話越しに複雑な顔をする。
「何もあの子に付き合って、貴方までバイクを下りなくても良いのに」
守道のバイクは、修理を終えてオタベックの家のガレージに戻っていたのだが、あの日から、守道もバイクに乗っていなかったからだ。
「東京と違って、流石にこの季節のアルマトイは…それに、彼が我慢をしているのに俺だけ乗り回すというのも、フェアではないですから」
「まあ」
「カザフの民は遊牧の、そして騎馬の民。アスリートとはいえ、本来彼を馬に乗せないというのは、酷な話かも知れませんね」
「ただしあの子の乗るのは、バイクという鉄の馬だけどね」
面白そうに笑う彼女に、確かにそうだと守道も口元を綻ばせた。
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