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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第4章 そばにいる、そばにいて。


まるでそれは自分の衣装と揃えたかのようにも見え、ヴィクトルは声をかけようとしたが、ちょうどその時スタッフに誘導された勇利は、リンクの袖へと消えてしまった。
「心配せんでも、勇利はアンタの想いに応える気持ちも覚悟も持っとる。せやから、デコも準備しとき」
「…言ってる意味が、全然判らないんだけど」
「けっ、どうせこれから嫌でも判んだろうが」
「スケートでの想いに、スケートで返答…ってね。ロマンチックだねえ」
純とユーリ、クリスの言葉に益々頭の中に疑問符が湧いてきたヴィクトルだったが、厳かなアナウンスとその後で会場に響いたメロディに、思わず目を見張った。
「続いては、男子金メダリスト勝生勇利によるEXです。今季コーチでもあるヴィクトル・ニキフォロフとの直接対決を全て制した『漆黒のモンスター』の躍進は、おそらくこれからも続く事でしょう。曲は…『離れずにそばにいて』」
かつては自身のFSであり、昨シーズンは勇利のEXとして何度も一緒に確認、滑ってきたプロであるが、リンク上の勇利は穏やかに微笑むと、これまでにない繊細さと優雅さを帯びながら滑り始めた。
「ほな、行こか。すんませーん、勝生勇利の『小道具』入りますぅ」
「え?え?ちょ、クリス!ユリオもやめないか!」
3人がかりで袖に移動させられたヴィクトルは、リンクの前でブレードカバーを外されてしまう。
「『コーチ』で『パートナー』なら、勇利の想いにちゃんと応えてあげなきゃね」
「グダグダとウゼェんだよ!いいからとっとと行きやがれ!」
「うわあっ!?」
ユーリに背中を押されたヴィクトルは、半ばつんのめるような形でリンクへ飛び込んでしまう。
客席からの歓声を聴いて、慌てて表情と姿勢を整えたヴィクトルだったが、リンクの向こうから近付いてきた勇利が、本来の振付にはなかったランジの姿勢で自分に右手を差し出してきたのを見止めた瞬間、感情が激しく揺さぶられるのを覚えた。
「ヴィクトル、」
「…泣かない、つもりだったのに…笑って、楽しく終えるつもりだったのに…っ…どうして…っ…」
勇利の優しい声と手の温もりに、ヴィクトルの両目からは堪え切れずに涙が溢れ出す。
体勢を起こしながらヴィクトルの濡れた目尻を拭った後で、勇利はヴィクトルの手を力強く握りしめた。
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