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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第4章 そばにいる、そばにいて。


そのままユーリに連行される形でリンク裏を移動するヴィクトルは、いつしか心身共に成長していた弟弟子の後ろ姿を眺めていた。
「今はまだ無理だけど…近い将来この俺が、常勝ロシアを取り戻す」
「え?」
「せいぜい、それまで束の間の栄光に浸ってろ。カツ丼にもそう言っとけ」
心なしか低い声で語るユーリに、ヴィクトルは目を瞬かせる。
「…あと、あんまヤコフに心配かけんな。もうトシだし、お前よりも数倍ジジイなんだぞ」
「ユリオには言われたくないなあ」
「うるせぇ!長谷津の空気にだらけてばっかいねぇで、たまにはロシアに顔出せよ!でないと、俺がヤコフに八つ当たりされてウゼェんだ」
「それ、俺のせいなの?」
「『お前ら』のせいだ」
握る手に力を込めたユーリの返事を聞いて、ヴィクトルはふっと表情を和らげた。
「ユリオは、この1年で随分大きくなったね」
「…ンなの、全く成長しない方が変じゃねぇかよ」
「ただの成長じゃない。苦しい時期を本当に良く乗り越えた。今のユリオは、真の意味でシニア選手になれたと思う」
揶揄ではないヴィクトルの真摯な声を耳にして、ユーリは思わず歯を食いしばる。
「長谷津に移った後も、オフにはなるべくロシアに戻るようにするよ。勿論、勇利も連れてね」
「…」
「だから、機会があったらユリオも日本へ遊びにおいで。俺も勇利も、そして純の奴も喜ぶ」
「…考えとく」
ヴィクトルの手を握るそれとは反対の指で唇をなぞりながら、ユーリは先程より幾分か穏やかな声で応えた。

リンクサイドにヴィクトルが到着すると、クリスに水を渡されながら呼吸を整えている純がいた。
「サユリ、連れて来たぞ」
「ユリオくん、おおきに!何せ、勇利のEXには『小道具』が必須やから」
「は?」
勇利の今季のEXは、純の振付師としての初仕事だったバッハの音楽に乗せたもので、小道具は不要の筈である。
「『愛人』の僕は、勇利から真剣な頼み事されたら弱いねん」
「どういう事?」
「さっきのデコのEXに、どうしても今すぐ応えたい、て言うてきてな。手続きの為に久々にあちこち全力疾走したわ…間に合うてホンマに良かった」
言いながら純が視線を動かすと、そこには今季EXに着用していた衣装とは異なる、ヴィクトルと良く似たデザインの青いシャツを身に纏った勇利がいた。
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