第5章 遭遇と探索
動き方を秘密にする理由は、どの格闘技にも取り入れられていないものがあるからだ。
それが…全身の動きを効率化する為に『反射の域』に達するほど、攻撃を受けて受けて受けまくる。
例の光の粒の訓練だ。
敏捷性よりも器用さが上の理由はきっと、それをいつでもどこでも自在に受けれるようになっているからこそだろう。
しかもその粒は極小で直径2mmしかない。
正しく当てるのも一苦労。おまけに途中で急カーブして攻撃を避けながら迫ってくる。
それに対して攻撃や防御を当てまくること自体、非常に難しい。
そうすることで身体に合った動きを強要させ、動き方もまた矯正するというわけだ。
というやり方を教えて、それを好きな時に大気中の魔力をもとに出し戻しできる道具をクリエイトで作って、このやり方を教えた。
と共に作った2つのそれの所有者をアイズとフィンでそれぞれ登録し、開始と終了だけ言うことを聞くように設定した。
最初はジャブ程度の時速200kmからガンガン上げていき、最終的には光に等しい速度となって予測自体が激ムズになることも説明した。
皮膚やなんとなくの感覚を通して、風の動きや僅かな変化を感じながら対応することもまた同様に。
そして身に付けた動きこそが、風月流の型だ。
いつ如何なる時、どこに攻められようとも反射的に防げる。
と言っても、あの水晶のお陰で思い出したんだけどね。
最終的には歩きながら、走りながらでも避け続けたりいなし続けたりできるようになっている。
日常的に叩き込めさえすれば、いつ如何なる時も動けるようになる。そう信じてのことだった。
その成果は知っての通り、アイズとの身体能力の差を感じさせない戦いだ。
完璧な受け身や防御で一撃さえも喰らわなかったことで察して欲しい。
と言っても、察していたフィンだからこそ弟子入りしたそうなのだが…
やはり一朝一夕では難しそうだ;
アイズとフィンは苦戦しているようで、加速がつけばつくほど重く感じる。
逸らすのもまた難しくなる上、さらに球状で自動で相手の動きに合わせて避ける為、中々に弾きにくい。
慣れさえすれば完全に脱力した状態でもなお、弾き返す瞬間のみに力を集約させるコツを掴めるだろう。
そう考えていた矢先、黒髪の男の人が私の名を叫んで呼び出した。