第9章 【石田三成】待てば甘露の日和あり
「目晦まし…信玄が、よく使う手か」
謙信様に、背後から声をかけられ。
三成くんがにっこりとほほえんだまま、返事を返す。
「そうなのです。
先日、まさにしてやられまして…いつか誰かに使い返してやろうと、目論んでいた次第」
「虫一匹も殺さぬ様な顔をしている癖に…底意地が悪い」
「ふふ、お褒めに預かり光栄です」
今度こそ、三成くんは私達の元へと帰り着き。
私はと言えば、害が衣装の肩布だけで済んだことにほっと胸を撫で下ろした。
「三成、よくやった!俺も鼻が高いぞ」
「ありがとうございます、秀吉様」
「…千花の声に、奮い立ちでもした?
動きが変わったように見えたけど」
「そうですか、家康様?…でも、そうですね」
三成くんがじっと、こちらを見た。
柔らかく細められた瞳の中、昂る熱を見つけてしまいぞくり、と背が粟立つ。
「私も男、ですから。
…好いた御方に、格好いいと思って頂きたいのは当然でしょう?」
な、何言ってるの…そんな、呟くように小さな私の声に。
皆が、家康すら、笑っている。
そんな笑い声の中、信長様が声を上げた。
「して、三成…
此度の見事な試合の、褒美は何が良い」
「…え?褒美、ですか」