第9章 【石田三成】待てば甘露の日和あり
三成くんが開いた掌から、強い風に誘われて砂粒が飛ぶ。
そして真っ直ぐと、風下に立つ謙信様へと…
謙信様はすぐにその意図を理解して、大きく刀でそれを薙ぎ払う。
しかし、砂嵐を払った先から高く飛び上がった三成くんの姿が現れ。
急いでまた刃を構え直した所に、落ちる力と自重を加えた、重たい一閃が振り下ろされる――
思わずその場にいた全員が固唾を呑み。
きぃん、と高い金属音がその場に響いた。
そして、一瞬にして互いの刀は各々の手から弾き飛ばされ、少し離れた地面へ音を立てて落ちる。
着地した三成くんは、すぐに体制を立て直し。
謙信様は、素早く身を翻し。
それぞれの刀を手に取るため、駆け出そうとする――
「此度は、それにて」
信長様の声が朗々と響き渡り、二人は駆け出そうとした足を止めた。
「ふん、貴様等…命を奪う迄続けるつもりか?
三成、謙信の体勢の揺らいだ所を逃さぬ早業、見事。
謙信、咄嗟に三成の弱った右腕へと力をかけたと見た…まさに神業。
…良い物を見た。今宵の宴もさぞかし、旨い酒が呑めることであろう」
謙信様が憮然とした表情で刀を拾い上げ、鞘に仕舞った。
三成くんは同じく刀を仕舞うと、ふ、と表情を和らげ。
ゆっくりと、こちらに戻ってくる。