第9章 【石田三成】待てば甘露の日和あり
城の広場の、細かく美しい白砂利が足摺りに合わせてもうもうと砂煙を立てる。
吹いてきた強い南風が、更にそれを巻き上げた。
その白煙の中、三成くんが左掌を地について身を支え。
謙信様をじっと、見据えている…
ぴりぴりとした雰囲気に耐えかね、ぎゅっ、と両の手を握り合わせ。
三成くん、と声に出す――
「地に手をつくとは、無様だな」
「そう…ですね。
…しかし、まだまだやれそうです」
ほんの小さな呼び声だったつもりが、静まり返った広場に驚くほど響き。
三成くんのふわり、とした笑顔と視線がかち合う…
どきり、と胸が跳ね上がるけれど、すぐにゆっくりと立ち上がる姿に安心する。
「…立ち上がらないから、肝を冷やしたね」
「流石はうちの三成だな。
…闘志はまだ、喪われていないぞ」
なんだかんだ、心配している家康と。
誰よりもその身を案じているくせに、余裕ぶる秀吉さん。
二人の安堵の笑顔に引き摺られて、黙って居られなくなり口を開く――
「三成くんっ…頑張ってーっ!!!」
春風に背を押される様に、三成くんが地を駆ける。
迎える謙信様が、正眼の位置に刀を構えた。
その時、ざあっと音を立て、一段と強く暖かな風が吹き抜ける…
舞い散る砂嵐や花弁の中、何もかもを見逃すまいと目を凝らす。
三成くんがぐっと力を込め握り締めていた、左の拳をはらり、と解いた――