第9章 【石田三成】待てば甘露の日和あり
それから、三成くんと謙信様は二人揃って信長様に願い出た。
同盟締結祝いの御前試合だ、なんだと託けて――
「大将が自ら、我が軍の将と戦うと?
…前代未聞ではあるが、面白い」
いやいや、何も面白く無いっ…!!
そんな私の無言の抵抗は、届くこと無く。
盛り上がった皆があれよあれよと言う間に特設のリングを組み、真剣での試合が始まったのだった――
「千花、見なよ。
先刻まで圧されていたけれど、三成がどんどん攻め入ってる」
家康の声に、思考から視線を戻す。
その言葉通り、三成くんの刀が的確に謙信様の斬撃を捉え、尚且つ速攻で斬り返す――
防戦一方だったのが、拮抗状態にまでなっているように見えた。
「…これだから、彼奴は相手に回したくない」
「え?これだから、っていうのは…?」
「凄いだろう、千花?
三成曰く、戦いの中で相手の太刀筋を見極めて、分析し…対応していくらしいんだ」
「実際に戦いの最中で頭を使うなんて、そんな事が出来るのか…甚だ疑問だけれど。
彼奴の戦い方を見ていると、真実なんだろうと思うよ」