第9章 【石田三成】待てば甘露の日和あり
「な、なんですかっ…」
私が戸惑いの声を上げると同時に、三成くんが牽制するように一歩踏み出し。
そしてまた同時に、謙信様がふん、と鼻を鳴らし顔をそらした。
「信玄が天女だなんだと五月蝿く言っていたから、どれ程かと思ったまでの事。他意など無い…
何をもってそこまで評したのか、分からずじまいだが」
またあの人はそんな軽口を、と苦笑しかけるが。
三成くんが徐ろに口を開く――
「…軍神ともあろう貴方が。
この方の、千花様の魅力に気付かないなど、思っても見ませんでした」
「…っは、あ…!?三成くん、何言って…」
「…ほお」
好戦的とも取れる三成くんの煽り文句に、謙信様は愉悦に満ちた目を細め。
そして次は、三成くんの方をじっと見つめる――
「信玄は、お前の名も口にしていたぞ。
…石田三成」
また、薄れていたびりびりとした空気が戻ってきたのに、息を呑む。
三成くんは臆すことなく、謙信様の目をじっと見つめ返す――
「まるでまぐれ当たりのような、何処か神がかった戦い方をする、と。
何を言うものか、と聞き流していたが…
俄然、興味が湧いた」