第9章 【石田三成】待てば甘露の日和あり
三成くんは、先の戦で負った怪我が治ったばかり。
今日から、本格的に政務へ復帰となる。
少し動くだけで、家康や私に小言を言われる日々で余程抑圧されていたのか…今日はとても機嫌がよく、いつも以上ににこやかだ。
その笑顔がまるで煌めいて見えるのは、惚れた欲目なのだろうか――
そんな考えが過ぎった自分に恥ずかしくなり、家康ばりに大きなため息をつきながら歩いていると。
目を見張るほどの、立派な桜の巨木が姿を現す…そして。
「あれ…お花見の先客がいるね」
「そうですね…ん、何処かで見覚えが…」
色素の薄い、長身の男の人が、桜を見上げ真っ直ぐに立っている。
風に靡いた髪、気配に気付いたようにこちらを素早く振り向く鋭い目――