第4章 内川の誓い
良く分からないが、望ましい結果らしい。「星」はともかく、「死」って良いカードなのか?とりあえず指示通り、私と仁さん、互いのカードを重ねる。すると姉さんは、先程の紫水晶とは別に、もう一つの鉱物…どこか見覚えのある薔薇水晶を取り出した。そして…。
「南無や…至りし者の御霊よ、天の叡智のもとに蘇り給え!せいやーっ!」
十字展開したカードに薔薇水晶が触れた刹那、火花放電の如く生じた光が輝き、間もなく柱を描いた。やがて光の中から、人影らしき形が…。
「…ん?あら、ここは…?」
聞き覚えのある声…いや、まさか…?
「あ…あっちゃん!」
私と仁さんが、一斉に目を丸くした。現れたのは星河(ほしかわ)亜紀、またの名を「青薔薇」と俗称された。今は亡き星川家総帥の、分家の姪に当たる。また、先ほど姉さんと須崎司祭が実行しようとして失敗した魔術の真理を、誰よりも知り尽くした者(の一人)である。そして…数年前の不幸な戦争に際し、敵の大軍に包囲された母校、渋谷七宝院(しっぽういん)学園に籠城し、将軍を戦死させるなど敵方に一矢を報いた後、自身も星夜へと消えた、紛う事なき故人である。
「えーっと…私は確か、トキと愛美(あゆみ)と夢有(むう)を先に逃がして、私と椿(つばき)と湊(みなと)は渋谷に残って、結のもとへと向かう政府軍を足留めするために、最期の手段を…」
「亜紀ちゃん!永眠中の所を強引に召喚してしまい、申し訳ございません…ですが、お力を貸して頂きたい事が…」
「…ああ、結の家出先の…あの怪しい教会の皆さん?聖さんに、『グラなんとか』さん。あなたは…『ひとみ』よね?」
仁さんが、庖丁を突き立てた…。
「めぐちゃんだよ!め・ぐ・み!」
「あら、そう…隣のあなたは、誰…かしら?」
誠に遺憾である。
「亜紀ちゃん、お願いしたい事があるのですが…」
「入信の勧誘ですか?私、神話には多少関心もありますが、形骸化した在来の教会には…」