第4章 内川の誓い
「イッヒロマン」は「私小説」「一人称小説」のゲルマン語で、姉さんは本書に「私達の物語」という意味を込めた。あとは、これを持って…。
「対小惑星隕石砲が東京方面に接近!地上に残っている区民は、大森大隊の誘導に従い、一刻も早く退避して下さい!」
「聖様、急ぎましょう!今の私達には、単独でのフィールド展開に限界がありますので、少し強引な方法ですが、複数のパワーストーンを共振させ、ピラミッドを築きます。私は左に、海底のアクアマリンを配置します。全ての慟哭を、この藍玉に込めて…!」
「あ、そうやるんですか…それでは、私は司教の紫水晶を右に捧げて…何か強そうな事を申せば良いのですか?あ…浅き夢見じ、アメジスト!」
「…あ、駄目ですね」
「あれ、どうしちゃったの?」
私とその隣の仁さんが困惑するが、すぐに分かった。
「私と聖様が点を二つ置いても、線にしかなりません。面を開くには、もう一つの点で3角形を創らなくては…」
当然の真理に今更気付き、落胆する一同。打開するには、能力者があと一人必要なのだが、思い当たる人物は、もうこの世に…。
「伝令!津軽海峡にて星川軍苦戦中、玉砕の恐れあり!東海鎮台は津島三河の進軍速度を上げると共に、可及的速やかに増派願いたいとの事!以上の件、大森から転送致します!」
寿能城代はいつの間にか平和島司令官を気取っているが、指揮命令系統が崩壊するほど苦戦しているのか?しかし、あの星川軍が全滅寸前とは…ん?星川?
「ああ!そうです、その手がありました!」
姉さんはそう言うと共に、お気に入りのタロットカードを取り出した。『クリスタルタロット』と書かれているが、トランプ占いをしている場合だろうか?そんな疑問をよそに、姉さんは手馴れたカードをシャッフルし、三つの束にカットする。
「仁、この中から一枚選んで下さい!」
「あ、はい!えっと…これにする!」
「十三番『死』の逆位置、さすが仁ですね!では、あなたが二枚目を!」
そう言われ、私もカードを一枚引く。それを裏返し、描かれていたのは…。
「素晴らしいです!十七番『星』、これならできます!二人とも、そのカードを十字に重ねて下さい!」