第2章 相模県箱根町 湯本温泉
「そうね。須崎さんなら知っているんじゃない?ま、一寸先は闇だし、色々と想定しておくべきよ。平和を望むならば、戦争に備えるのが歴史の教訓。それに、仁が生まれて母さんが死んだ時、そしてこの子と出逢った時、誓ったでしょう?私達は百年後、千年後の未来を見据えて、必要ならば残酷な運命にも立ち向かうって。聖…あなたの眼に、百年後の日本は、世界は見えているの?」
「あの日の祈りを忘れた事などありません。信じた未来は、必ず守り抜きます。ですが一握の不安もあります。果たして私達は、本当に平和を築く事ができるのか?そして、私達が生きたこの時代を、後世の方々はどう評価なさるのか?その全てを見通す事は…」
せっかくの旅行が、あの反射砲とやらと、更に勇姉さんの邪推で、やや深刻な雰囲気になってしまった…と思った時、最後の審判まで私の隣に居る仁さんが、パンドラの箱に希望を見出したような顔で立ち上がった。そして再び、私を見詰めて微笑んだ。
「大丈夫だよ!だって私達は、ずっと一緒だもん!聖姉様と勇姉様、あなたと私…皆が清き明き心を胸に抱く限り、神様も私達と共に居て下さる!もし間違ったり、壊れてしまった時は、何度でも建て直せば良い…私はそう信じるよ!ね?」
あの年の夏を思い出すたびに、私は推し量る。彼女達の眼には、百年後の世界が映っていたのではないか…と。