• テキストサイズ

【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『上林鉄男、ロシアへ行く。』

「純から日本出発の連絡貰ってもう3日経つけど…何かあったのかな?」
「飛行機が遅れてるにしても、いい加減こっちに着いていい頃なんだけどね」
リンクサイドで勇利とヴィクトルが話していると、スマホを片手にユーリが「『サユリ』のインスタ見つけた」と勇利の肩を叩いてくる。
ユーリに差し出されたスマホの画面を確認すると、そこには列車のコンパートメントらしき場所で満面の笑みを浮かべた純が映っていた。
「こいつ、ウランバートルからモスクワ経由で向かってるみたいだぞ」
「まさかシベリア鉄道?何だってそんな手間のかかる方法で…」
「──あ、」
「?どうしたカツ丼」
「昔、僕と純がシニアに上がったばかりの頃…」

シニア1年目の合同合宿時に、ふとした事から鉄道の話題になり「いつか、海外の列車の旅もしてみたいね」と推理小説に登場する海外の列車について純と話していると、当時のコーチからとある作品について「あれは駄作だよ」と一笑に付されたのだが、そのコーチが去った後で純が勇利の肩を叩きながら、怖ろしいほど美しい笑顔でこう語ったのだった。
「勇利くん、あれは駄作なんかやない。色んな意味で『めいさく』言うんや」
「…そこには、何の漢字が当てはまるの?」

「……ねえ。あの子って、ひょっとしてバカ?」
「ううん、一応日本でも指折りの大学院まで出た筈だけど…」
「カツ丼のダチやってる時点で、結構な変わりモンだと思うぞ」
3人のそんな思惑も知らず、当の本人はシベリア鉄道のコンパートメントで某『シベ超』シリーズの文庫や、出発前タブレットにダウンロードしておいた動画を見ながら、ひとり含み笑いを零していた。
/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp