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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第4章 番外篇・僕と『ヒゲ』


『本物の感触』

「それでは、皆さんお疲れ様でした」
「有難うございました、隊長!」
「あの、その呼び方はちょっと…」
「自分らにとって、隊長は隊長ですから」
「俺、上林隊長の式姫にならなりたいっス!」
とあるゲームを題材にしたアイスショーに出演したのを切掛に、純はそのゲームユーザー達で結成された『隊長スケート倶楽部』の特別コーチをしていた。
それまでフィギュアスケートに興味のなかった彼らが、ショーを見た後自発的にアイスリンクに通い始め、やがて純の元に「一度でいいから、自分達にスケートを教えてくれませんか」というDMを寄越してきたのだ。
覚束ないながらも懸命にスケートに取り組み楽しむ彼らの姿に、純はこうしたフィギュアの普及もあるのだなと好感を抱きつつ、快諾の返事をした。
流石に無償という訳にはいかなかったが、破格のレッスン料で彼らを指導したのである。

レッスン終了後、彼らから継続できるトレーニング方法を尋ねられた純は、次のように答えた。
「まずは小さな事から習慣化させましょう。電車使うてはるなら一駅分歩くとか、集合住宅にお住まいならエレベーターやなくて階段使うとか」
「うぅ、俺8階住みだからいきなりそれはキツイかも…」
「そやったら、最初は4階分だけ階段で頑張るいうのはどうですか?慣れてきたら、徐々に階段使う割合を増やしていくみたいに」
「なるほど」
「隊長、俺スクワット始めたんですけど上手くいかなくて」
「スクワットは、やり方間違うと膝痛めるだけですよ。大事なのは、ゆっくりでもええから正しい姿勢でやる事です」
実際に見せた方が早いだろうと、純は彼らの前でスクワットの姿勢を取る。
「ちょっと、僕のお尻に手を置いてみてくれますか?」
「え?」
「今のがただ膝曲げただけのダメな例。ほんでこれが正しい時。ちゃんとお尻の筋肉使うてるの判りますか?」
「あ、は、はい…」
「もっかいやりますね」
現役引退したとはいえ、純の引き締まった筋肉に触れたその彼は、掌に伝わる温もりにどぎまぎする。
(ちょ、俺上林隊長のケツ触っちゃってる…!?)
他の『隊長』達からの驚愕と羨望の眼差しと、少し遠くから髭を生やした男の鋭利な視線を浴びつつ、彼はもう二度と訪れないだろうその感触を堪能していた。
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