第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『合法?なハグとキス』
「今季のGPFは、まるでGPSでの借りを返すと言わんばかりに、日本の伊原礼之がロシアのユーリ・プリセツキーをおさえて初優勝です!」
名前をコールされた礼之は、大歓声の中リンクに設置された表彰台の一番高い所に登る。
「両選手が、互いの健闘を称え合うようにハグしていますね。今回の試合も、まさに好敵手と呼ぶに相応しい戦いでした」
「男子シングルを牽引する『青い瞳のサムライ』と『ロシアの貴公子』のライバル対決は、これからも私達をワクワクさせてくれそうです!」
「…締まりのねぇニヤけ顔でこっちを見るな、不自然に力強く抱きついてくんな、ついでにドサクサに紛れて変なトコ触ろうとすんな!お前今、本気でキスしようとしただろう!?」
「そんな、折角合法的に大観衆の前でユリにハグやキスが出来るのに!」
「選手生命の前に、社会的に終わるような真似してんじゃねぇぞ、このどエロ侍が!」
纏わりつこうとする礼之の手を全力で阻止しながら、ユーリはリンクの温度だけが原因ではなく顔を赤くさせると、彼の耳元で凄んだ。
「だって、シーズン始まってから試合でしかユリに会えなかったんだよ!?この大会が今年最後のチャンスだったから、絶対に勝ってユリから祝福のキスを…いひゃい!ほっぺた引っ張らないで!」
「調子に乗んな!いいか、この借りはきっちりワールドで返してやるからな!」
「うん、僕も負けない。でも…会見やその他諸々終わったら、ユリの泊まってる部屋に行ってもいい?」
「おま…っ、こ、ここでする話じゃねぇだろ!」
「…ダメ?」
「そうは言ってねぇよ、バーカ…」
「…お邪魔なら、セレモニーが終わり次第俺は即刻退散させて貰うぞ」
「待てオタベック、今のコイツと俺を2人きりにすんな!」
3位に入賞していた友人の呆れ返るような目線に、ユーリは、礼之の身体を引き剥がしながら助けを求めた。
「礼之くん、ユリオとファイナル出られて嬉しかったんだろうけど…ちょっとテンション上がり過ぎかな?」
「全く所構わずイチャついて…ユリオはもう少しTPOを考えなきゃ」
「──君らもな」
会場の片隅で『恋人繋ぎ』でセレモニーを見守るヴィクトルと、現在は引退してプロスケーターとなった勇利に、純は至極冷たい一瞥をくれた。