第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『KYにKO』
振付作りの為にカナダを訪れていたオタベックは、夜になってから滞在先の宿舎で、守道と電話をしていた。
『調子はどう?』
「何時も通りだ。貴方こそ、大学はいいのか?」
カナダとカザフスタンは11時間程時差があるので、現在アルマトイは翌日の午前中である。
『君にお休みを言いたくて…なんて。今日は、午後から講義だからのんびりしてるよ』
「全く貴方は…」
恋人の笑い声に、オタベックは溜息を吐く。
だが、守道との会話で心身が癒やされたオタベックは、通話を終えた後、彼から聞いた愛の囁きを頭の中で反芻させると、つい口元が綻んでしまうのを覚えた。
その時、
「久しぶりだな!」
そんな雰囲気を分断する勢いで、JJがレオを伴って入ってきた。
「…何でいる」
「お前達がカナダに来たと聞いて素通りする程、このJJは薄情じゃないぞ!」
「俺は明日でいいって言ったんだけど、JJが聞かなくてさ」
慌てて表情を引き締めたオタベックは、彼らを招き入れると、自分はベッドの端に腰を下ろす。
暫し3人で取り留めのない話をしていたが、ふとJJがオタベックに目を向けると、身を乗り出してきた。
「初めて来た時と比べて変わったな。あの頃のお前は、何処かピリピリしてたから」
「武者修行に来ていたのだから、当然だろう」
「いや、何ていうか最近のお前は、随分と雰囲気が柔らかくなった気がする」
「あ、確かに。そのブレスレット着けるようになってから、ちょっと変わったよね」
友人2人にそう言われたオタベックは、内心動揺しながらも努めて平静に返す。
「…当初よりゆとりが持てるようになったのは、否定しないが」
「えー?それだけ?」
「さては、そのブレスレットに何か秘密があるようだな」
「これは単なる家族からの贈り物だ。何を…?やめろ…やめないか!」
心中で恋人に詫びつつオタベックは身構えたが、尚も追及の手を緩めようとしないJJの手がブレスレットに触れた瞬間、彼の背後に回りその身体を拘束した。
その日。
レオのSNSには「凄いものを観た」という見出しで、ベッドの上でJJにジャーマン・スープレックスを決めたオタベックの姿がUPされた。
「何ベッドで見事なフィニッシュホールドしてるの?」という守道の問いに、オタベックは「半分は貴方のせいだ!」とむくれながら答えたという。
