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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『微笑みのプリンス』


5ヶ国語を習得し、更に日常会話程度なら暫く聞いている内に理解してしまうという語学堪能な面を持つ純だが、読文となるとそうはいかない。
勉強した言語以外の、特にアジア圏特有の文字は全く読めないのだ。
オフに勇利とタイへ訪れた純は、1日だけ単身郊外へ観光に出かける際、ピチットに不安を漏らした。
「あれだけ流暢に話すから、てっきり僕純がタイ語もマスターしてたのかと思ったよ」
「会話は何とかなるけど、文字の方はサッパリや。ちょっと街から外れると、英語表記が途端に乏しくなるからなあ」
中心部や観光名所はさておき、タクシー運転手の中には英語が判らない者も多いので、外国人観光客の為に住所その他がタイ語で書かれたカードを常備している施設もある。
「それなら、僕が純の目的地やバンコクのホテルの名前を、カードにタイ語で書いてあげるよ。タクシーの運転手にそれを見せるだけでOKにしとくから」
「ホンマに?助かるわ」

出発の朝、ピチットはタイ語で地名等が書かれたカードを数枚、純に手渡してきた。
「こっちが行きでそっちが帰りね」
「有難う…何でカードの角に、ピチットくんの写真がプリントしてあるん?」
カードを手に、純は礼を言いつつも首を傾げる。
「大丈夫!これで純は、何の問題もなく1人旅を満喫出来るよ」
「気を付けてね」
ピチットと勇利に見送られながら、純は目的地に向かって出発した。

その夜。
「君は、カードに何を書いとんねん!」
無事戻ってきた純は、開口一番ピチットに詰め寄った。
「え、何かトラブったの?」
「お陰さんで皆無でした…けどな、行く先々で『お前はあのプリンスの友人か』って、別の意味で気が休まらんかったわ!」
アスリートと同時にピチットはタイのスターでもあるので、地名と一緒にカードに記された「僕の大切な友達をよろしく」というメモと彼のサインに、過剰なサービスに加えて純についても根掘り葉掘り訊かれっ放しだったのだ。
「大げさだよ。純だって地元では似たようなものじゃない」
「君らタイのお金持ちは、日本とは桁違いやねん!」

朗らかに笑うピチットと、すっかり余裕を失くした純の顔を、勇利は苦笑交じりに眺めた。
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