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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『スライスな怒り』


かつてユーリは、守道に一度だけ怒られた事があった。
それは他でもない自分が原因だったのだが、まさか彼の怒りがこれ程までとは、と内心恐れ慄いていた。
「日本人にとって、食べ物の恨みはガチで根深いからね。良く覚えておきな」
珍しく怒りの表情をした守道によって、ユーリは恥ずかしい罰を受ける羽目になったのである。

そして、現在。
「さて…俺の小憎らしいアルティン。説明してくれないか」
「すまない、練習帰りでお腹が空いててつい…」
「だとしても、何もこれを食う事はないだろう!他にも食材あったのに!」
部屋に戻ったら、冷蔵庫に昨夜作り置きしておいた筈の料理の皿がなく、代わりにチルドケースに自分が用意したものより上等な肉の塊と、洗われて水切りかごに伏せてある皿、そして気まずそうに顔を背けているオタベックに、守道は怒声を上げた。
部屋の鍵を預けてあるので、休みの前日などオタベックがたまに連絡の有無を問わず泊まりに来る事がある。
オタベックは、守道が不在でも勝手な真似はしないので、部屋の食材を彼が食した所でとやかく言ったりはしない…普段は。
「君ら外国人には判んないんだよ。わざわざ日本から持ってきた包丁と研ぎ器まで使ったのに…」
「ここでは守道の方が外国人…ゴホン、薄切り肉の料理って滅多にないから。野菜もいっぱい入ってて…その、美味しかったです」
「そりゃ美味いだろうよ。ロシアもカザフも売ってる肉は塊ばっかだから、俺が苦労して作った冷しゃぶサラダを君達は!」
「…君達?」
「友達同士、通じるものがあるんだろうな。それじゃ君にもユリオくんと同じ罰を受けて貰おうか…脱いで」
「守道?何をする気だ、待っ…!」
物騒な笑みを張り付かせながら近付いてきた恋人に、オタベックは恐怖した。

「…そろそろいいだろ?俺が悪かったから!」
「ユリオくんは、その格好で1時間耐えてたよ。情状酌量で、君が買った肉を俺がスライスし終えるまでって、減刑してあげたのに」
随分と緩慢な動作で肉を切る守道の傍では、黒のボーダーTシャツと猫耳、そして日英露で『私は盗み食いをしました』と書かれた札を首からぶら下げたオタベックが、心底恥ずかしそうに坐り込んでいた。


※この後、互いの痴態をバラされた友人同士電話で喧嘩。
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