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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『サムライ、追い込み中。』


今回の四大陸選手権は「若手に世界での経験を積ませる」というスケ連の方針により、日本からはベテランの勝生勇利を除いた選手達が参戦していた。
その中の1人で『青い瞳のサムライ』の呼び名も高い礼之は、競技時間以外はひたすら書物を前に眉間に皺を寄せていた。
「純さん、この問題答え合ってますよね?ね?ね!?」
「ちゃんと合うてるから、安心し」
「じゃあ、これは?」
「僕、その教科取ってへんかったから…健坊、判るか?」
「どれどれ…大丈夫やアレクくん。バッチシ」
「それでも不安です~…どうしよう、どうしよう!?」

月末に大学入試を控えた礼之は、特に今季は競技の傍ら受験勉強に励んでいた。
アスリートの進学先は、選手達の環境などによって様々だが、礼之は自身の立場と勉強したい学部その他の理由で、帰国子女枠入試による国公立の大学を志望していたのだ。
「GPSの時も、客席で問題集開いとるアレクくんの姿がすっぱ抜かれてたもんなあ」
「気持ちは判らんでもないけど、まずは目の前の試合に集中しなさい。大体君、もう横浜の大学1コ受かっとるやろ」
「東京と横浜じゃ、通学やリンクまでの時間も大違いなんですよ。ただでさえ『ハァ?帰国枠入試?そんなんでウチの学生名乗る気?』って、一般入試組からは蛇蝎の如く嫌われてるのに…」
「いや、そこまで差別される事と違うやろ。立派な権利なんやから」
唸りながら頭をかいた弾みで、礼之の右手からシャーペンが落下する。
「あ、アレクくんのシャーペンが落ちた…はっ!?」
何気なく呟いた南は、直後自分の失言に気付くと慌てて隣の礼之を見る。
「もしも、月末の試験に落ちたら…この世の全てを呪ってやるー!」
「アレクくん、落ち着いてー!」
「縁起でもない事言うの止めなさい!」
試合とは無関係な『サムライ』の魂の叫びに、周囲は何事かと目を見張った。

『試験の前に、舐めたスケートしやがったらただじゃおかねぇからな。東京と横浜なんて、俺らの距離に比べりゃへでもねぇだろうが』
「うん、そうだねユリ♪」
恋人からの電話であっさり気持ちを切り替えた礼之は、四大陸を3位で終え、その後の受験も無事に本命の大学に合格したという。
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