第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『トリックなトリート』
※一部マニアックネタ注意。
その日の練習後、リンクで行われていたハロウィンパーティーの小道具を身につけたオタベックは、胡散臭げにこちらを見ている守道に、お約束の文句を口にした。
「何してるの」
「だから、Trick or Treat」
「Trick、と答えたら?」
「その時は貴方のN×R250と、この間貴方が納車したばかりのNin●a1000に、SUZ○KIのステッカーを…」
「やめろ」
只の冗談のつもりが、守道が間髪入れず余裕のない声で返してきたので、オタベックは喫驚する。
狼のつけ耳姿で首を竦ませているオタベックを密かに可愛いと思いながらも、守道は努めて平静を装いつつ、彼の前に少々大きめの箱を差し出した。
「これは?」
「俺は感染者になりたくないんでね。それに、今日は君の誕生日だろ」
訳の判らない言葉と共に守道から渡された箱を開けたオタベックは、中から出てきた物に思わず声を上げる。
「何度言っても、君はシーズン中もバイクに乗るのをやめようとしないし」
「シーズン中は、貴方とタンデム・片道のみ運転を守ってる。俺としては、かなり譲歩しているつもりだが?」
「だったら、もっと安全性も重視しなさい。そのタイプのメット、持ってなかったよね」
守道にそう言われ、オタベックは、貰ったばかりのシステムヘルメットを見る。
つけ耳を外して試着してみると、驚くほどピッタリだった。
いつの間に俺のサイズを測ったのだと考えたオタベックは、以前音楽を聴いていた守道が、ふざけて自分の頭にイヤホンのコードを巻き付けていたのを思い出した。
「素直じゃないのだな」
「君には負けるよ」
「でも、有難う。凄く嬉しい」
ヘルメットを抱えながら無防備に笑ったオタベックを見て、守道も口元を綻ばせて頷く。
「今度の休日に、少しだけツーリングに行かないか?」
「今は、試合近いだろ?寒いしケガや風邪引いたら大変だから、当分は車以外運転しちゃダメだよ」
「このようなTreatを寄越しておきながら、オフまでお預けって幾ら何でも酷過ぎる!」
すったもんだの末根負けした守道は、天気の良い休日の昼に、自分のプレゼントを身に着けたオタベックを後ろに乗せて、超近場のタンデムツアーに出かけた。