第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『王様の道化師・2』
そんなJJの態度にも腹を立てる事なく、特訓の末どうにか形にする事が出来た彼は、何度もJJに礼を言ってきた。
「君や他の皆に比べたら小さな大会だけど、良かったら観に来て欲しい」と彼から試合に誘われたものの、気恥ずかしさと子供じみたプライドから「貴重な休日にそんな些末な試合を観に行くなんて、JJには相応しくない」と、当日は友人と遊びに出かけてしまい、彼ともそれっきり会う事はなかった。
「試合の後、地元に帰ったのだろう」と漠然と考えていたJJだったが、シーズンの終わり頃になって、とある夫婦が面会に現れた。
彼の両親だと名乗るその夫婦から、JJは彼が最後の試合で着ていた衣装を渡されると、思いもよらぬ事実を告げられた。
実は、彼は随分前から病に冒されており、先日の試合を終えて間もなく入院、その後ひっそりと息を引き取っていたのだ。
試合も決して良いとはいえない成績だったが、JJと猛練習した3Sは認定され、その事に本人はいたく喜んでいたという。
病床でも「僕は、未来の世界王者にジャンプを教えて貰ったんだよ」と自慢気に話していた、とも。
深く感謝の意を表す夫婦とは対照的に、JJは首を横に振ると、やがて彼の遺品である『道化師』の衣装を抱きしめながら、その場に泣き崩れた。
「傲慢な自惚れ屋は、とんだ裸の王様だったのさ。以来、クローゼットの片隅でこの『道化師』は、キングが慢心しないように見張っているんだ」
それからのJJは、競技だけに限らずボランティアやチャリティー活動にも、積極的に取り組むようになった。
プロに転向してからは、難病と闘う子供達の為の基金も立ち上げ、毎年アイスショーには、件の彼の両親をはじめ多くの子供達をリンクに招いている。
「君の想いや頑張りは、きっと彼も天国で見てると思うで」
「だといいな…」
純の言葉に、JJはクローゼットの『道化師』にもう一度視線をやる。
「なあ、サユリ」
「…君も僕をそう呼ぶんかい」
「サユリを家に呼んだのは、頼みがあったからなんだ。少し迷ってたけど、お前に彼の話をしてやっと決心がついた。実は…」
その後。
カナダで開催されたアイスショーでは、純も振付に関わったJJの新プログラム『道化師』が、初披露されたという。