第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『Adolescence of サムライ』
早朝。
オフを利用して東京の礼之の家に泊まっていたユーリは、彼の妹メルヴィの声で目を覚ました。
「アレク、自分で作っといて忘れてるじゃない!」
「早朝だけ練習に出掛けるから寝てて良いよ」と言われていたが、礼之のベッドを下りたユーリは、廊下に続くドアを開ける。
「何かあったのか?」
「あら、おはよう。あのバカ兄貴、練習にお弁当持ってくの忘れたのよ。人一倍空腹に弱い癖して、全く…」
メルヴィの返事に、ユーリは食卓のテーブルに鎮座する礼之の好きな赤色のバンダナに包まれた弁当を見る。
「私もこれからすぐ出掛けないとだから…アレクのリンクとは逆方向だし」
「じゃあ、俺が持ってってやろうか?」
「いいの?」
礼之の家からリンクまでは地下鉄で30分足らずで、ユーリでも何とか迷わずに行く事ができる。
着替えを済ませたユーリは、弁当の包みを取ると玄関の扉を開けたが、ふと視線の先に1台のスクーターを見つけた。
「あれってお前と礼之、どっちのだ?」
「私のよ。アレクは、エンジン付きのバイクは乗らないから」
「借りても良いか?」
「保険入ってるから構わないけど…免許は?」
「ある」
言う通りユーリは普通車とバイクの免許を所持しているが、かつてオタベックを車に乗せた際、「お前は運転は向いてないと思う」と真顔で言われた事を棚に上げると、メルヴィからバイクの鍵とヘルメットを借りた。
「日本は左車線だからね。リンクまでのナビ入れて上げるから、スマホ貸して」
ナビをユーリのスマホに登録したメルヴィを見送ったユーリは、早速彼女のバイクに搭載されたホルダーにスマホを固定すると、エンジンをかける。
「カゴはねえのか。俺のリュックは…震動で弁当の中身揺れっかな?食い物を足元に置くのもアレだし…」
暫し悩んでいたユーリだが、やがて何かを決意すると、シートに腰掛けた両腿の間に包みを固定した。
「つまりここに来るまでずっと、僕のお弁当はユリの太腿に挟まれ続けてたの?僕のお弁当が、恋人の感触と温もりが詰まった『ユリの股間弁当』に…」
「その淫猥な表現を今すぐやめろ!この思春期エロ侍が!」
弁当箱を抱きしめたまま、感謝とは違った喜び方と興奮をしている礼之に、ユーリは顔を真っ赤にさせて怒鳴りつけた。
