第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『同窓会と、サムライ』
今季のGPSカナダ大会では、現在ではプロに転向したJJが特別リポーターとして会場を訪れており、オタベックやアメリカのレオ・デ・ラ・イグレシアなど、同年代の選手達が久々に揃ったのだが。
「何だあれは?」
「公式練習が終わった後、暫く真剣な顔でスマホ見てたと思いきや、急に泣き出して…」
「俺の知る所、あのサムライボーイはユーリと付き合っているんだったな。さては、喧嘩でもしたか?」
「いや。早速ユーリから俺の所に『誰が礼之を泣かせやがったんだ』とメッセージが届いてるから、違うと思う」
唯一の日本人選手として参戦していた礼之は、レオの言う通り、廊下の片隅で独りベソをかいていたのだ。
「カツキかミナミ、せめてサユリがいればアレクの相手をしてやれるのだろうが…」
「カツキもミナミも別の試合、振付師の純も、今季はアレクのEXしか担当してないんだっけ?」
「ふむ。ここはこのJJが、憂いに沈んだサムライを慰めてやるとしようか」
「それは止めた方がいい」
JJの眩しい笑顔とは対照的な表情で、オタベックとレオの2人は同時に反応する。
やがてグシ、と鼻を啜りながらゆっくりと立ち上がった礼之を見て、2人は彼に近寄った。
「何があったかは知らないが、明日から試合が始まるから、今の内に吐き出した方が良い。俺で良ければ聞く位は出来るぞ?」
「…ごめんなさい。多分、オタベックさんには範囲外の話題です」
「そうか…」
口調は柔らかいが、間髪入れずに礼之に拒否されたオタベックは、少しだけ落ち込む。
「じゃあ、俺はどうかな?」
陽気な声で問いかけてきたレオとはJr時代に少し面識があったので、礼之は暫くレオの顔を見た後、ボソボソと呟き始めた。
「…CS」
「うん?」
「勝てばアメリカでいうWSに進める試合でしたが…9回裏に相手チームの打球が、僕の贔屓チームファンの悲鳴が上がるレフトスタンドへと吸い込まれていきました…」
予想外過ぎる返事に、一同は固まる。
「…き、球種は何だった?」
「ツーシームでした…」
「何だか随分と奇天烈な奴だな」
「否定はしないが、アレクもお前には言われたくないだろうな」
再び嗚咽を漏らし始めた礼之に、3人は何とも言えない顔をした。
※その後、電話でユーリに怒られて試合では台乗り。
