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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『セクシー英雄、爆誕。』


「最初から勝負はついてるじゃないか!意味があるのかこの対決は!?」
くじ引きによる対決種目が発表された瞬間、オタベックはらしくもなく情けない声を上げた。
アイスショーの最中に行われたお遊び企画で、無作為にくじ引きで選ばれた2名のスケーターによる様々な対決が繰り広げられていた。
勇利と純による『スピン対決』では、ハンデとしてドーナツスピンを封印した純に勇利が辛勝し、ミラとスンギルの『ダンス対決』では、見事なヴォーグを踊るミラに対し、'70年代ディスコのロボットダンスを無表情に披露したスンギルに軍配が上がった。
そして最後の対決に選ばれたのは、引退後もなお色褪せぬ存在感を誇るヴィクトルとオタベックで、司会者の引いた種目は『セクシー対決』だったのだ。
「何、逃げるの?『カザフの英雄』のする事とは思えないなあ」
「ぐ…」
「じゃあ、ハンデを上げる。誰か1人アドバイザーにつけて良いよ」
面白そうに続けたヴィクトルの言葉を聞いて、オタベックは咄嗟に、先程の勝負を終えて勇利と寛いでいた純に視線を向けた。
「無理せんとき。所詮ショーのお遊び企画やし、あのデコに勝つのは至難の業や」
「…いや、確かに敵前逃亡は『ソルジャー』の名折れ。何とか対抗できる手段はないか?」
半ば縋るような目付きのオタベックに、純は暫し考えを巡らせていたが、「一瞬の勝機に賭けるで」と彼の耳元で策を授けた。

ラテン音楽に乗せて、胸元をはだけたヴィクトルが圧倒的な色気をリンクに見せつけた後、オタベックの番となった。
僅かに襟元を緩め髪型を崩したオタベックは、試合とは異なる緊張感を覚えながら滑り出す。
そして、純の助言通り恋人に触れられるシチュを妄想しながら右足を上げると、曲げた膝から内腿にかけて意味深な仕草で左指を這わせていく。
「…!?」
ふとその時、オタベックの中である記憶が甦った。
持参していたカメラが切欠で、『彼』の通う大学の写真部の暗室を借りて初めて写真の現像をして、そして。
その時の『彼』との事を思い出したオタベックは、思わず演技中なのも忘れて首を仰け反らせたが、否や会場からこれ以上ない歓声が起こり、対決の勝者となる。

我に返ったオタベックは、様々な理由から暫く赤面していた。
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