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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『ダンディ、修行中?』


EXの練習中、礼之は音楽に合わせて小道具のステッキをリンクに叩き付けた瞬間、先端部分が折れてしまったのを見て慌てふためいた。
「ど、どうしよう!?」
「礼之くん?」
ただならぬ様子にリンクに駆け寄ろうとした純だったが、それより早くクリスが礼之に近付くと、自分の荷物から取り出したテープで折れたステッキの補修を始めた。
「氷は、何だかんだ言って硬いからね。タップダンスの床と同じ勢いで叩いちゃダメだよ。ちゃんと音楽にSEは入ってるんだから、それに合わせて置くだけでOK」
ホラ、と補修を済ませたステッキを絶妙な力加減でリンクに置いたクリスの身のこなしを、礼之は感心しきった顔で見つめる。
「有難うございます。ジャコメッティさんにこんな形で指導して頂けるなんて、感激です」
「こちらこそ。俺も、現役最後の試合で君の演技に魂を揺さぶられて、最高に燃えさせて貰ったよ」
勝生勇利に次ぐ2位だったクリスは、この世界選手権をもって現役引退を発表していた。
「君の事は、勇利や純からも聞いてたけど、本当に素直なスケートをするんだね」
「僕は未熟で、それしかできないから…」
「1年目であそこまでやれば上出来だよ。今日のEXナンバーも、楽しそうに滑ってたの判ったし」
GPS日本大会を除いて、今季の礼之のEXは『踊るリッツの夜』である。
「僕、フレッド・アステアが大好きなんです。僕と同じで小柄だけど、ダンディにスーツを着こなして、ダンスをする所なんか特に最高で!…あ」
「それで夢中になって、ステッキ折っちゃったんだ」
クスクスと笑い声を漏らすクリスに、礼之は心底恥ずかしそうに俯く。
自分よりやや明るめのくせ毛と青い瞳を持つこの小さな『サムライ』を、クリスは可愛らしいと思いながら、ほんの少しだけ悪戯心が湧いてきた。
「で、君のステッキを直した俺へのお礼はないの?」
「え?えぇと…」
「ふふふ、例えば君のこの瑞々しい身体で…」
「ひあああ!?」
クリスに抱き寄せられ、尻を撫でられた礼之は悲鳴を上げたが、直後純の指と何処からか飛んできた空のペットボトルが、クリスの痛点と後頭部を直撃した。


※ペットボトルを投げた人物は、言わずもがな。
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