第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『僕のラプンツェル』
アイスショーの本番前。
ユーリが控室で勇利に髪を編み込んで貰っている所に、礼之が入ってきた。
2人の様子に礼之は目を丸くさせ、それを鏡越しに見たユーリは、疚しい訳ではないが少しだけ気まずくなる。
「あ、礼之くん」
「…お取込み中でしたか?」
「バ、違ぇっての!お前と知り合うずっと前から、時々カツ丼にやって貰ってんだ!コイツ、意外と器用だし!」
「ユリオ、『コイツ』って僕の事?」
「『スミマセン、ウソです。お願いシマス』」
伏し目がちに尋ねてきた勇利にぎこちない日本語で返したユーリは、衣装を確認しつつ時折こちらを窺っている礼之の視線を、複雑な気持ちで受け止めていた。
支度を済ませ控室を出たユーリは、周囲を見回した後廊下に坐り込んで音楽を聴いている礼之の姿を見つけると、彼に小走りに近付いた。
礼之の隣に腰を下ろしたユーリは、こちらに気付いた彼の青い瞳を見つめながら、口を開いた。
「さっきの話は本当だぞ。昔からカツ丼に髪編んで貰うと、気合いが入るっつーか…お前はどう思ってるか知らねぇけど、今俺が好きなのは礼之だ。カツ丼…勇利の事は、あいつのスケートが好きだからこそ、勝ちたいと思ってる」
「…」
「…何とか言えよ」
ジャージの袖を引きながら、ユーリは耳まで赤くさせている恋人を睨む。
すると、背後から回された礼之の手がユーリの肩を抱き寄せてきた。
「綺麗にして貰ったね。凄く似合ってる」
「え?」
「勝生さんは、僕にとっても尊敬する先輩で素敵なスケーターだから、ユリがそんな風に思うのも判るよ。でも…君の恋人としては、やっぱりちょっと面白くない」
ユーリの肩から移動した手で編みこまれた金髪を撫ぜると、礼之は恋人の耳元で囁く。
「後でこの髪…僕に解かせて」
いつもより低い声が、ユーリの鼓膜と心を刺激した。
その夜。
ホテルのユーリの部屋では、下着にTシャツだけのユーリがベッドに腰掛けながら、上半身裸でスウェット姿の礼之にドライヤーの風を当てられていた。