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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『まだ、これからの僕ら・1』


かつてユーリが最後のJGPFで優勝した表彰式の後、会場の片隅で嗚咽を漏らしている人影を見つけた。
顔は良く見えず、背格好から同じ試合で戦った選手なのは判ったが、自分の勝利以外に全く関心がなかった当時のユーリは「そんな風に泣くぐらいなら、さっさとやめちまえばいいんだ」と鬱陶し気に吐き捨てていた。

GPSロシア大会で優勝したユーリは、バンケットでやっと礼之とまともに話をした。
「『サムライ』は、俺の最後のJGPFでも台乗りしてたんだよな?バンケで姿見なかったけど」
「あの時は、試合が終わった直後に日本の祖母の訃報を知らされて。EXには参加しましたけど、自分の出番が終わって直ぐ帰国したから、バンケには出なかったんです」
「…そっか。悪ぃ事聞いちまったな」
「いいえ。大会前から覚悟はしてたし、お別れも出来ましたから」
その時遺品として貰った彼女のレシピを元に、礼之は競技の合間の息抜きも兼ねてお菓子作りを楽しんでいる。
「プリセツキーさんのおじい様のカツ丼ピロシキも凄く美味しそうですけど、少しカロリーが気になりますよね」
「そうなんだよなあ。ちょっと前までは、食べ放題でも何とかなってたんだけどよ」
「その点、僕のお祖母ちゃんのレシピはヘルシーですよ。日本のお菓子は油や牛乳を使わないものも多いから」
礼之が話すレシピの1つに興味が湧いたユーリは、彼に教えて欲しいと申し出たが、礼之の返事を聞く前にヤコフ達に呼ばれて離席せざるを得ず、結局その後礼之と再び会う事はなかった。

数日後。
『礼之くんから預かり物があるわ。こっちでスキャンしたのを送るから、そっちでプリントなりしてくれるか?』
純からのメッセージを確認したユーリは、寮のプリンターを借りて印刷すると、それがバンケで話していた彼の祖母のレシピである事に気付いた。
簡単な図解も含め日本語と英語の両方で記された手書きのレシピを、ユーリは見つめる。
「あいつ、凄ぇ綺麗な字を書くんだな…別にサユリに俺のアドレスを聞いて、連絡くれても良かったのに」
極力さり気なさを装いながらその旨を告げてみた所、「僕もそう言うたんやけど、『自分は、プリセツキーさんとそこまで親しくはないので』て」と返され、胸の奥が僅かに疼くのを覚えた。
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