第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『次代のエースは、発展途上』
昨シーズンの全日本選手権で競技生活を引退した上林純が、今回ロシアナショナル参戦中で不在のヴィクトルにかわって勝生勇利のコーチ代理を務めている光景に、早くも試合前からマスコミの注目を集めている中。
「南さん!僕の、僕のスマホでも撮って下さい!」
「ぅわっ、アレクくん揺らしたら危ないて!後でおいのスマホから画像転送したるから!」
「じゃあ、それでいいです。撮れましたー?」
「バッチリや!」
スマホの画像を確認した礼之は、南と歓声を上げた。
子供の頃から仲の良い2人は、大会や合宿などで一緒にいる事が多い。
幼かった頃は、年上の南が礼之の手を引いたり膝に乗せたりしていたが、いつの頃からか南の背を追い越した礼之が、逆に南を抱っこしたり膝に乗せたりするようになっていたのだ。
「これはお宝画像やろ!かつて同期で1、2も争ってた勇利くんと純くんが、臨時とはいえ選手とコーチとして一緒におるなんて!」
「勝生さんも純さんも、カッコイイですね~」
南のスマホを覗き込みながら、礼之も嬉しそうに笑う。
「おし、撮るモン撮ったし控室戻ろかアレクくん」
「そうですね、行きましょう南さん♪」
「──行きましょう、やないやろ」
不意に背後から忍び寄る声を聞いて、2人は振り返る。
「あ、純くん」
「君らなあ!ええ加減いつまでも子供みたいな真似しとらんと、日本のエースの自覚を持ちなさい!」
「確かに僕は未だジュニアですけど、僕も南さんも、日本を代表するスケーターの自覚は、ちゃんと持ってますよ」
「そういう殊勝な事は、そのふざけた格好を止めてから言い!」
不満げに口を挟んだ礼之に、純は思わず南を肩車している彼に向かって指を突き付けた。
「だってこうせんと、勇利くんと純くんのツーショット撮れんかったけん。なあ」
「ねぇ」
「個人的にはめっちゃ君達可愛いです…けどな、周りが見たらどう思うか!」
「「まっさか~。勇利くん(勝生さん)じゃないし、ありえないですよそんなの♪」」
肩車の状態で視線を交わし合った後で笑う2人に、純は頭痛を覚えつつ本音混じりのボヤキを漏らした。