第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『初恋に、さよなら』
アイスショー終了後。
バンケットで会話を楽しんでいた所、それまでジンジャーエールを飲んでいた礼之は、うっかり近くにあったソーダ割のアルコールが入ったグラスを傾けてしまい、喉と頭が焼け視界が回るのを覚えた。
「礼之くん、しっかりしぃ!」
「俺、水取ってくる!」
ドリンクコーナーへと足を急がせるユーリを見送りながら、礼之の一番近くにいた勇利は彼の身体を支えると、傍らのソファに寝かせた。
礼之は、ぼやけた視界の先に勇利の顔が映るのを覚えると、呂律の回らない舌を動かす。
「…かつき、ひゃん?」
「大丈夫?」
少しだけ熱に浮かされたような青い瞳に見つめられて、勇利は僅かに身構えたが、それより早く礼之の伸ばされた両手が勇利の顔に触れてくる。
「の…初恋の人…初めての…」
「え?何?」
ブツブツと小声で繰り返す礼之に問い返そうとした瞬間、勇利は彼の手に更に引き寄せられて唇を重ねられた。
余りの事に勇利をはじめ純やヴィクトルも微動だにできずにいると、背後からどす黒いオーラのようなものが漂ってくる。
「ユリオくん?」
そこにはグラスを手にしたユーリが、眉間に物騒な皺を刻みながら勇利と礼之を見下ろしていたのだ。
「あのねユリオ、礼之くんは酔っぱらってて」
「あ~ユリ~♪僕、返ひてもらっらからねぇ、ユリのファーストキス!ボルひチの味は、ひなかったけろぉ♪」
ユーリは無言で近づくと、グラスの中から氷を1つ取り出し、ケタケタ笑い続けている礼之の服の中に落とす。
「ひあぁっ!?」
「ちょっと俺と、酔い醒ましに行こうな」
怖しい程美しい笑顔と穏やかな声で言うと、ユーリは勇利を押し退けるように礼之を起こすと、何処かへ連れて行った。
「その場でグラスの中身ぶちまけるか、サムライくんを外のプールに突き落とすかとも思ったけど…」
「そら、ユリオくんかて成長してるんやから」
「あんなユリオは久々だったよ。礼之くんじゃなくて僕を睨んだ理由は判っちゃったけど」
「…ユリ。何で僕、シャツだけ濡れてるの?」
「知るか、バカ!」
「あ、大声出さないで~」
部屋のベッドで頭を抱えている礼之に、ユーリは頬を染めながら、薬と水をぶっきらぼうに差しだした。