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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『好きじゃなくてもいい・2』


拗ねたような声に、ユーリは苦笑しながら続けた。
「だけど、昔の事だけでそいつの全てを嫌うってのも、ちょっと傲慢じゃね?…気ぃ悪くすんなよ。前にも言ったよな?もしも俺とお前がシニアデビュー同じだったら、絶対お前は俺を好きになってないって。何しろあの頃の俺、お前が嫌う要素満載だったからな」
コーチのヤコフをはじめ幾人から「勝手に過去形にするな」と突っ込まれそうだが、ユーリ自身もかつては相当な悪童ぶりを晒していたからだ。
「礼之は、そいつの全てが気に入らねぇのか?」
「…そこまでは。4Tはちょっと不安定だけど、3Aのタイミングやコンビの繋ぎ方は上手いと思うし」
「何だ、ちゃんと見てんじゃねぇか。いいんだよそんなんで」
恋人の笑い声を聞きながら、礼之は何気なく先日購入したスケート関連の雑誌を開く。
すると、勇利や南の特集に紛れて彼のインタビュー記事もあり、大会への抱負の他、自分のターニングポイントについての質問に、次のように答えていたのだ。
『あの時全日本で上林さんに叱られた事に、今では感謝しています。』
「…」
「礼之、どうした?」
訝し気なユーリの呼びかけに我に返ると、少しだけすっきりした表情で再度口を開くと感謝の言葉を紡いだ。
「有難う、ユリ。君に相談して本当に良かった」
「ま、これでも先輩だからな」
「うん。そしてそんな先輩が、僕の腕の中で可愛くなるのもたまらない」
「…このエロ侍!その大会で舐めたスケートしたら、ただじゃおかねえぞ!」

早朝のリンクで彼と遭遇した礼之は、4回転ジャンプに失敗した彼の背後にさり気なく近づくと、努めて無表情に声をかけた。
「踏み切る前に溜め過ぎです。でもスピードは悪くないから、それに上手く合わせれば大丈夫だと思います」
「え?」
初めて挨拶以外で礼之に話しかけられた彼は、思わず声を上げる。
「僕は、貴方自身の事は好きになれない。でも、貴方のスケートは嫌いじゃないです。それに…同じ大会で戦う『仲間』だから」
「…有難う。それで充分だ」
やや顔を背けながら言葉を続ける礼之に、それでも彼は嬉しそうに目を細めていた。
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