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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『サムライは、妖精と夢を見る』


伊原・アレクシス・礼之は、自分の恋人が、かつてはどうしようもない程の悪童だった(本人談だが、某元リビングレジェンドや一部のスケーター曰く「過去形じゃないから」)事は、知っているつもりである。
しかし、
「おい、聞いてんのかよ!このクソサムライ!」
日本の祖父から礼儀作法を仕込まれて育った礼之にとっては、それが英語であっても聞くに堪えない暴言の数々であった。
元々悪口の語彙に乏しい上口喧嘩も得意ではないので、ろくに言い返せないままでいた礼之だったが、大好きな人が口汚く自分を罵る様に、次第に苛立ちと怒りを覚え始めると、大股に歩を進めユーリとの距離を詰める。
「んだよ?てめ…っ」
顔を顰めるユーリに構わず、礼之は彼の両肩を掴むと唇を重ねた。
突然の事に腕の中で暴れるユーリを抱き込みながら、これまで幾度となく味わった彼の口腔を強引に蹂躙する。
「──黙れよ」
唇を離した礼之が、いつもより低い声で鋭く言い放つと、ユーリの顔に朱が差した。
途端にそれまで吊り上がっていた眉が下がり、僅かに目を潤ませると俯く。
漸く大人しくなったユーリにやれやれと息を吐いた純は、キッチンカウンターに向かった。
「喉乾いちゃったからレモネードでも作ろうか。『ユリ』は、はちみつとメープルシロップのどっちがいい?」
フィンランド風に恋人の名を呼ぶも、返事はない。
「…どうしたの?」
その場に立ち尽くしたままのユーリに小首を傾げていると、やがて先程とは打って変わって蚊の鳴くような声が聞こえてきた。
「お前が…」
「?」
「…礼之が黙れ、つったんだろ…」
何処か拗ねているような、それでいて自分に扇情的な眼差しを向けているユーリに気付くと、礼之は今度は優しくその身体を抱き寄せた。


「…バーカ。このエロ侍」
「そのエロ侍に、さっきまで縋り付いて蕩かされちゃってたの、誰だ?…コラ、蹴らない!」
ベッドの中で暴れるユーリを止めようとした礼之は、直後「あっ」と声を漏らした恋人が心底恥ずかしそうに足を閉じる姿を見て、仄かな征服欲と優越感を覚える。
時に乱暴で口が悪く、だけど同時に愛らしく従順にもなる自分だけの『妖精』を腕の中に抱き込みながら、礼之はゆっくりと目を閉じた。
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