第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。
『サムライ、故郷に帰って青春と暗躍する。』
ジュニア最後のシーズンを最高の形で終える事が出来た『青い瞳のサムライ』こと伊原・アレクシス・礼之は、高校進学を機にフィンランドのエスポーから家族で日本に帰国、同時にコーチもそれまでの外国人コーチから、純も過去に少しだけ世話になった事のあるベテラン日本人コーチに変更していた。
現在の礼之は、帰国その他の都合上学年を1年遅らせて都内の高校に通いながら、来るシニア1年目に向けて練習に励んでいる。
そして純は、礼之のたっての願いでSPとFS両方の競技プロの振付を担当する事になり、振付師としては初めての競技プロ制作に向けて、都内のリンク近くのカフェで礼之と待ち合わせしていた。
彼の要望や現在の様子を事細かくメモを取る一方で、学生生活についても尋ねてみる。
「日本での生活は慣れたか?」
「ちょっと大変ですけど、友達は皆親切だしエスポーにいた頃とは違った新鮮さがあって、毎日とっても楽しいです!」
真新しい高校の制服に身を包んだ礼之は、屈託のない笑顔で答えてきた。
「そっか。競技との両立は大変やと思うけど、学校での生活も楽しめる範囲で楽しまんとな」
「はい。だから僕、高校で委員会に入ったんです。旅行委員会!」
「旅行委員会?」
目を丸くさせた純に、礼之は大きく頷く。
「僕の学校では、旅行委員会が1年の1日課外活動や、2年生の時にある修学旅行の計画をするんです」
「へぇ」
「だから僕、絶対修学旅行はスケートがオフシーズンの初夏にします」
「そうなるとええなあ。けど、そればっかりは委員会皆で話し合って決める事やから…」
「だって、日本の春は学年始まったばかりで皆落ち着かないし、秋は文化祭や他の学校行事とのバッティングや、修学旅行ピークで学生が集中するし、冬は雪やインフルエンザの心配があります。だから、初夏が一番です。僕、もう決めましたから」
(そういやこのコ、一度決めたらよっぽどの事やないと絶対に折れん性格やったわ…)
そして1年後のオフシーズン。
純は、予告通り修学旅行を満喫する礼之のインスタを見て、何とも言えない笑顔を浮かべていた。