• テキストサイズ

【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『サムライボーイと風雅人』


ピーテルでの滞在期間を終えた純は、最後の鉄道の旅を楽しもうと、ヘルシンキ経由の帰国を決めていたのだが、純のSNSでそれを知った1人の少年から「上林さんのご帰国前に是非お会いしたいです。僕ヘルシンキまで出てきますから、そこで待ち合わせしましょう」とLINEが届いた。
そして今、純はヘルシンキ某所のカフェでその少年とお茶を飲んでいるのだが。
「ズルイです。僕、昨シーズンの全日本からずっと、上林さんにお願いし続けてるのに」
「あ、あんな。この間のユリオくんとのプロは、ホンマにイレギュラーもええとこやってん」
「それでもズルイです!勝生さんはまだしも、約束は僕の方があの人よりも先の筈ですよ!」
金髪に青い瞳という一見白人系の少年の口から飛び出す流暢な日本語に、純は内心タジタジになる。
エスポー出身の日本人Jr選手、伊原・アレクシス・礼之は、過去にJGPFでユーリに完敗して以来、いつかシニアでの彼との再戦を目指していた。
はじめは、すぐにでもユーリの後を追わんとシニアに上がろうとしていたが、純の現役最後の試合となった全日本での経験から、もう1年待つ事にしたのである。

「先日のロシアのアイスショーは、僕も動画で観ました。勝生さんのは知ってましたが、プリセツキーさんのも直ぐ上林さんの振付だって判りました」
「せやから、別にあれは礼之くんを蔑ろにしたんと違…」
「だったら、僕の振付も作って下さい。僕、夏休みは日本の祖父の所におりますので」
「ちょ、そんなん僕だけで決められる訳あれへんやろ?君のコーチにも話聞かんと」
「コーチからはEXならOK、ってお返事貰ってます。上林さんの事もご存知だったし」
手回しの良さに純が舌を巻いていると、礼之が来季から拠点とコーチを日本と日本人に変える旨を打ち明けてきた。
「両親の仕事が落ち着いたので、家族で帰国するんです。今のコーチも悪くないんですけど、やっぱり外国の人って意思疎通とか、こっちの空気あんまり読んでくれない所あるじゃないですか」
「…君の口からそれ聞くと、違和感覚えるのは何でかな」

純の言葉に、礼之は青い瞳を不思議そうに瞬かせていた。
/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp