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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『はじめまして、サユリ』


純のロシアでの滞在期間も残り僅かというある日、カナダからアルマトイに戻っていたオタベック・アルティンがオフを使ってユーリの元へ遊びに訪れ、ユーリからも「サユリもオタベックに会ってくれよ」と紹介されたのだが。
「え…あれ?」
ロシアの小さな英雄に紹介されて挨拶をした純だったが、自分を見つめるこれまたカザフの英雄の黒目がちの瞳が丸められた後で、ポロリと率直な感想が漏れたのはほんの僅か数秒の事だった。
「失礼。以前からユーリに貴方の事は聞いていたのだが、てっきり…」
「あー…判ったわ。気にせんといて。紛らわしい言い方しとったユリオくんが原因や」
「俺のせいだって言うのかよ!?」

アイスショーのプログラムを作って貰ってからというもの、ユーリはオタベックに連絡する度に純の話題を口にしていた。
その際「この間サユリと遊んだ」「サユリにドーナツスピンを見せて貰った」「サユリの部屋に行った、泊まった」と、純の事をあだ名で呼んでいたので、オタベックは「ユーリには『サユリ』という年上の彼女が出来たのか」と勘違いしたのである。
「残念やったなあ。『サユリ』の正体が、こんな冴えない兄ちゃんで」
「そんな事はないです。最近のユーリの電話やメールからは、貴方の話ばかりでしたから」
「あ、言うなよオタベック!」
「あと、カザフスタンでは日本の映画やドラマも意外と観られています。『サユリ』という名をユーリから聞いて、年配の人がよく挙げていた女優を連想していたのですが…」
少しだけ残念そうな表情をしたオタベックに気付いた純は、彼に近づくとそっと耳打ちする。
「君、ひょっとして清楚系お姉サマがタイプなん?」
「…実は」
口角を笑みの形にしたオタベックに、純も面白そうに笑う。
「何やってんだよ。俺腹減ったから、あっちのスタンドでクローシュカでも食おうぜ!」

そんな2人に痺れを切らしたまだまだ「色気より食い気」なユーリの声に、純とオタベックは顔を見合わせると歩を進めた。
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