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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『友情の度合い』


日本主催のアイスショーに、タイのピチット・チュラノンも、ゲストとして招かれていた。
「オファーが来た時から、勇利に会いたくてたまらなかったんだ!」
「ピチットくん、お疲れ様!」
リハーサル終了後、一目散に勇利の元へ駆け寄ってきたピチットに、勇利はハグで応える。
勇利の振付の他に、語学能力を買われて開催中外国人選手達の通訳やコーディネイト役も任されていた純は、再会を喜び合う2人を微笑ましく眺めた。
「純、紹介するね。彼が」
「知っとるよ。微笑みのスケーター、クン(一般的なタイの敬称)・チュラノンやろ。はじめまして、上林純です」
「僕も知ってる!そこは日本風に『ピチットくん』で良いよ!僕も、君の事純って呼ぶから!」
元気良く差し出されたピチットの右手を、純は笑みと共に握り返す。
「良かったなあ、勇利。こんな素敵なコが親友で」
「うん。ピチットくんには、デトロイト時代本当にお世話になったんだ」
「あれ?2人は友達じゃないの?」
ピチットの質問に、勇利と純は顔を見合わせた。
「うーん、どやろか?」
「えっと…」
これまで同期としての付き合いはあったが、周囲やその他様々な理由から真の意味で判り合えない部分が多かった2人は、互いを本当に友達と呼んでいいのか不安を抱えていたのだ。
「僕、昨シーズンのジャパンナショナル観たけど、友達じゃなかったら、あんな凄いコラボなんて出来ないよ。勇利は純を、純は勇利を大切に思ってた。それって友達でしょ?」
あっけらかんと言いながら、ピチットは2人に視線を送る。
促されるまま互いを見つめながら、やがてクスリと笑い合うと、純はそっと勇利の手を取った。
「お互い、随分遠回りしてしもうたけど…改めて言うわ。勇利。僕と友達になってくれるか?」
「勿論だよ、純」
応えながら自分の手を重ねた勇利を見て、純は嬉しそうに笑う。
「何か新鮮でいいなあ…よーし!勇利!僕も改めて親友になって下さーい!」
「改めて親友って何!?」
飛びついてきたピチットの身体を、2人は慌てて支えた。
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