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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『貴公子の朝』


「流石に2日連続の遅刻は看過できんぞ、ユーリ。オフとはいえ少したるんどらんか?」
腕組の姿勢で厳しい視線を向けてきたヤコフに、ユーリは気まずそうに顔を背ける。
「このままでは他の者にも示しがつかないし、相応のペナルティが必要だな」
「んじゃ筋トレかバレエメニュー、あるいは走り込みの追加でもするか?結局は俺の為になるし何でも来いだぜ」
練習嫌いだった昔と比べたら大した進歩だが、ふてぶてしい態度のユーリにヤコフが益々眉間に皺を寄せていると、
「…日本には、昔から遅刻した若者が行う伝統的な習慣があると聞くわ」
およそリリアからは想像もつかない言葉が、彼女の口から紡ぎ出された。
「小耳に挟んだのですが、貴方は最近日本語検定の3級に合格したそうね」
守道の帰国以降、ユーリはリリアの知人の日本人女性から日本語を教わっていて、リリアは時折その進捗具合を彼女から聞いていたのである。
「良い機会です。ついでに、貴方の日本語の上達ぶりも拝見させて貰おうかしら」
ペナルティの内容を聞かされたユーリは、顔色を変える。
「ち、ちょっと待て、何だよそりゃ!?」
「罰なのですから、多少の恥辱は当然でしょう」
「多少じゃねぇだろ!それに、ロシアで日本のアレが手に入る訳」
「その心配は無用よ。アレク、」
「はーい、出来上がったのがこちらになります。このパッケージ可愛いですよね」
ロシアでよく目にする猫のイラストがプリントされた牛乳パックを型の代わりにして、礼之が焼いた物が見事な茶色と芳香を漂わせながらユーリの前に出される。
「礼之!テメェ、俺を裏切りやがったのか!?」
「私がアレクに頼んだのです。言いがかりはおやめなさい。さぁユーリ、覚悟は良くて?」
「…畜生おぉ!お前ら、俺の生き様よく見とけええぇ!」

その後。
リリアによる幾多のリテイクの末、『ロシアの貴公子』ユーリ・プリセツキーのSNSには、彼が食パンを咥えた姿で「いっけな~い、遅刻、遅刻ぅ!」とほぼ完璧な日本語を呟きながら、寮の廊下を駆けていく動画が上げられ、そしてそれは瞬く間に世界中を駆け回ったという。

リリア「次に遅刻をした時は、曲がり角でアレクにぶつかって貰います」
ユーリ「勘弁してくれ!」
礼之「僕とユリで新たな恋が始まるんですか(ドキドキ)!?」
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